年間1万5千人が死亡と推計

受動喫煙防止のための健康増進法改正をめぐり、国際基準に合わせた屋内禁煙の徹底を目指す厚生労働省と、分煙で規制の骨抜きを図る自民党が対立している。

法律では受動喫煙を「室内などで他人のたばこの煙を吸わされること」と定義。肺がんや心筋梗塞、脳卒中、小児ぜんそくなどのリスクが高まり、国内では受動喫煙が原因で年間1万5千人が死亡すると推計される。

2020年までの対策急務

世界保健機関(WHO)の「たばこ規制枠組み条約」は屋内の全面禁煙を要求しており、日本の対策は「世界最低レベル」の評価だ。近年の五輪開催国はいずれも受動喫煙防止のために罰則付きの法律があり、政府は2020年の東京五輪・パラリンピックに向け対策強化が求められている。

 

飲食店の禁煙徹底が焦点

たばこを吸わない人が受動喫煙に遭う場所は飲食店が約4割で最も多く、飲食店の扱いが焦点だ。

厚労省が3月に公表した改正案は、病院や学校は敷地内を全面禁煙、官公庁は屋内を禁煙、飲食店などは喫煙室設置を認めて屋内を禁煙とした上で、30平方メートル以下のバーやスナックなどは例外として喫煙を認める内容だった。

だが自民党は、一定面積以下の小規模飲食店は「喫煙」「分煙」を店頭に明示すれば喫煙を認めるとする対案を提示。厚労省案は未成年が利用しない小規模の店に限定して喫煙を認めるものだが、自民党案は厚労省案から大きく後退するものだ。

飲食業界や自民党の一部は分煙の徹底で受動喫煙は防げるとする。しかし、ドアの開閉で煙は流れ出るし、喫煙場所に飲食物を運んだり清掃をしたりする従業員は被害を受けざるを得ない。