大きな声でチームを鼓舞し、引っ張った津山(青木美帆撮影)

8月2日~7日、船橋アリーナ(千葉)などで開催された全国高校総合体育大会(インターハイ)男子バスケット競技で、28年ぶりの優勝を飾った福岡大大濠(福岡)。司令塔として、またポイントゲッターとして優勝の大きな原動力となった津山尚大(3年)=沖縄・北谷中出身=の成長を追う。

■放心…そして涙

津山は試合終了のブザーが鳴ると同時に、ぼんやりと頭上を見上げた。

「点差はついていたけど厳しい戦いでした。それがやっと…終わったなと。ほっとしました」

放心したような表情は次第に歪み、涙が出てきた。試合後の整列、あいさつ、胴上げ。試合終了から随分と時間が経っても津山は一人、ずっと泣いていた。

昨年末のウインターカップ(全国高校バスケットボール選抜優勝大会)から約8カ月ぶりの全国大会となったインターハイ。久しぶりに津山を見て、その変貌ぶりに驚いた。黙々とプレーしていた彼は、大きな声で的確な仲間への指示と鼓舞ができるリーダーになっていた。

■海外選手とのプレーで気付いたこと

きっかけは6月に中国で行われた、アジア中のスーパープレーヤーが集う「ナイキアジアキャンプ」に参加したことだったという。

片峯聡太コーチは話す。

「1対1ができたりシュートを決められる良さは1年生のときから持っていたけれど、ポイントガードに必要なリーダーシップの部分がなかった。僕もそのことをよく言ってきたんですが、キャンプに参加して、自分のことを知らない海外の選手とプレーした中で、黙っていてもプレーだけでは誰もついてこないということに心底気付いたみたいです」

津山自身も振り返る。

「声を出さないと、全然ボールをもらえないんです。去年まではキャプテンの青木さん(青木保憲=現筑波大)に任せて、自分はクールを気取って…ハハハ。下手くそなのに澄ましているところが自分のダメなところだと思ったので、今年は自分が声を出すことでチームをどれだけまとめられるかを、自分自身の挑戦にしています」

ベンチに下がっても、常にチームを盛り立てた(青木美帆撮影)

■無理にでも思いを口にした

元々声を出すことは得意ではない。それでも、自分の弱みを痛感したことで、無理にでも思いを口に出すようになった。「津山がゲームでリードしてくれるようになって、自分の負担が減って助かっている」と話す主将の鳥羽陽介(3年)=静岡・静岡大成中出身=は、その分練習や私生活の面でチームをけん引することに専念できるようになった。

昨年のウインターカップ決勝。福岡大大濠は明成に78-92という大差で敗れた。下級生でただ一人コートに立っていた津山は試合終了後、先輩たちに握手を求めた。最初に駆け寄った青木には、はっきりとこう誓った。

「来年は絶対に優勝します」

ウインターカップの決勝後、前主将の青木に握手を求める津山=写真右(青木美帆撮影)

1年時から強豪・福岡大大濠のスタメンを張り、高い技術と試合度胸を併せ持ったシュートでチームを幾度となく救ってきた津山。敗北と挫折、そして挑戦を経て、その力は揺るぎない「強さ」へと姿を変えつつある。(文・写真 青木美帆)