質問 なぜテロが起きるのか?

なんでテロが起きるのか? 宗教関係で争っているということは分かるけれど、過去に何が起きて、それがどのように発展しているのか、知りたい。(2年女子)

回答 支配への反抗 やまず(ジャーナリスト 藤田 正美)

テロとは個人あるいは組織が、主に政治的な目的で、人や社会を恐怖で支配しようとする行為を意味します。例えば日本でも、歴史の中で、政治的目的のために暗殺された政治家は数多くいますし、オウム真理教によるテロも起きました。

人類史上最大のテロ行為は、2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロです。オサマ・ビンラディンが率いるアルカイダがこの事件を引き起こした目的は、イスラム国家に駐留する米軍を追い出すことでした。同時多発テロの犠牲者は3000人近くに上り、この事件をきっかけに、米軍はアフガニスタンやイラクに侵攻しました。

現代社会では、社会を「恐怖」で支配している国はほとんどありません。社会を統治する機構はさまざまな形がありますが、恐怖による支配は長続きしないということは歴史の経験上分かっているからです。

それでも時折、新興国家などで軍事政権が成立し、恐怖による支配を行うことがあります。また、ロシアで体制に批判的なジャーナリストが次々に不審な死に方をする事件がありました。証拠はありませんが、これなどは権力によるテロの可能性があります。

一方、支配に反抗するためのテロはなくなりません。とくにその国から分離独立しようとする人々は、数ではかなわないためにテロによって自分たちの意思を表明します。とりわけ外部勢力の支配に対するテロ事件は、極端に言うと人類の歴史が始まって以来、絶えたことがないのです。

さらに異教徒の介入を嫌う過激派のイスラム原理主義者は、宗教の名の下に、また宗教の教義を利用してテロを行います(殉教という自爆テロがその典型です)。ただテロには本来、政治的な狙いがあるとすれば、つまり多くの人々の共感を得るためのものだとすれば、こうした行為は外部の人たちへの説得力を欠いています。テロにどう対処すればいいか、それは民主主義という統治機構を共通の価値とする諸国にとって、大きな課題だと思います。

ふじた・まさよし
1948年生まれ。東京大学卒業後、「週刊東洋経済」記者・編集者を経て「ニューズウイーク日本版」創刊プロジェクトに参加。同誌編集長、編集主幹。現在はフリージャーナリストとして活躍中。