千葉大学が来年4月に国際教養学部を新設する。世界が抱える課題を、日本の文化、ビジネス、技術によって解決する「日本発の新国際人」の育成を目標に掲げ、文系・理系にとらわれずにさまざまな学問分野を盛り込んだカリキュラムを組む。1・2年次での留学を促し、授業方法にも新しい試みを多く取り入れた異色の学部になりそうだ。(西健太郎)

学問を「ブレンド」

国際教養学部は、公私立大には設置の例があるが、国立大では初めて。国際教養学科を置き、入学定員は90人。専任教員46人のうち、3割を女性、15%程度を外国人にする。

世界の課題を日本の視点で解決することを理念に掲げる。カリキュラムの特徴は「学問領域のブレンド(混合)」だ。「国際」「日本」「科学」をキーワードに、人文社会科学、生命科学、自然科学といった文理双方の授業をそろえる。受け身で講義を聴くのではなく、グループワークを取り入れるなどした課題解決型の授業を全面的に取り入れる方針だ。例えば、留学生と共に日本の先端文化を英語で学ぶ授業を想定している。来年度から全学で6学期制を導入し、国際教養学部には、週2回集中して学ぶ科目も設けるという。

課題を自分で見つける

取り組むべき課題や解決方法を学生が自ら見つけるために、キャンパスの外での学びを重視する。大学の協定校を中心に海外で学ぶ「ワールド科目」のほか、国内でのインターンシップやボランティアといった現場体験で課題解決方法を学ぶ機会を設ける。見つけた課題を解決するために重点を置いて学ぶ専門分野を学生一人ひとりが決め、卒業論文などにつなげる。

学生には1、2年次の留学を促すが、留学先や期間は固定せず、一人ひとりの希望や関心に応じて計画してもらうという。

学生自身が4年間の学び方を決める必要があるため、履修計画や留学先などをアドバイスする専門職員を置くのも特徴だ。

入試は2タイプ

2016年度は、一般入試のみ実施する。センター試験の指定教科・科目は4パターンから選べるが、どのパターンも文理にまたがる受験が必要だ。個別試験は、3教科の筆記試験の「通常型」(定員80人)と、小論文と面接(英語)の「特色型」(同10人)から選ぶ。17年度からはAO入試も実施する予定だ。

担当の小澤弘明副学長は「国際的な問題に関心があり、好奇心を持って自分から課題に取り組める学生に入学してほしい」と話す。高校の勉強では「文系・理系を問わず各教科の基礎学力を身に付けておくこと」を求めているという。

卒業後の進路としては、自治体や社会起業、エンターテインメント、ITデザイン、大学院進学、国際公務員など幅広く想定している。

国際教養学部のカリキュラム
●普遍教育科目
・全学部共通の学問の基盤形成
●共通科目
・俯瞰(ふかん)科目:全体を見る眼を養う
・スキル形成科目:研究に必要な技術を身に付ける
・フィールド科目:現場で学ぶ、現場に学ぶ
・ワールド科目:世界で学ぶ、世界に学ぶ
●メジャー科目
・グローバルスタディーズメジャー:地球規模の課題を探求
・現代日本学メジャー:現代日本から解決方法を発信
・総合科学メジャー:文理混合の科学実践
●メジャープロジェクト
・卒業研究・卒業制作・卒業論文
※千葉大の資料を基に編集部が作成
 

文部科学省は8月28日、2016年度の国立大学の学部新設計画などを発表した。学部をゼロから新設するのは8大学=表。従来の学問の枠組みを超えた学部が多い。5大学が学部名に「地域」を入れている。地域に貢献する人材の育成を重視する大学が多いことが背景にある。ほかに、従来の学部の改組を7大学(弘前、岩手、東京工業、電気通信、信州、徳島、高知)が予定している。一方、16大学の30学科・課程の募集が停止される。その大半が教育学部に設置される教員免許取得が必須ではない学科・課程だ。学科・課程の廃止と新学部の開設を同時に実施する大学も目立つ。国立大学の学部の入学定員は9万5971人。今年度より306人減る。