東京大学の福田裕穂・入試担当理事は11月11日、2021年度一般入試(20年度に実施)から出願資格に、英語民間試験の成績か高校の先生の書類などによる「英語力の証明」を加える方針について「そのままやるのは難しい」と話し、実施見送りを検討する考えを示した。学内の委員会で検討のうえ、なるべく早く方針を公表するという。

出願資格に英語力の証明を求める方針を決めていた

東大の福田裕穂理事(中央)ら

東大は2018年9月、文部科学省や国立大学協会の方針を受けて、2021年度一般入試から出願資格として英語力の証明を求める方針を示していた。具体的には(1)国が設けた成績提供システムで認定された民間試験の成績(2)高校の先生による証明(3)どちらも提出できない場合はその理由書―のいずれかの提出を求めるとしていた。

ところが今年11月1日、文部科学省が民間試験の成績提供システムの開始を21年度入試から「延期」すると決定。国立大学協会は、各大学に11月29日までに文科省の方針変更を受けた対応を公表するよう求めている。

出願資格「そのままやるのは難しい」

福田理事は11月11日にあった記者会見で、「東京大学は去年9月に(英語力を)出願資格として利用する(と発表した)と同時に(民間試験の利用に)さまざまな問題点があることも指摘し、関係者が集まり議論する場を設け、受験生が安心して受験する場を設けてほしいと主張してきた。(システムを延期する文科省の決定は)その検討が不十分で受験生の安心を得るに至っていないという判断だったと思う。関係者ができないという時点で、(東大が)出願資格(の追加)をそのままやるのは難しいと私自身は考えている」「東京大学として、前提がくずれている。令和3年度(21年度)入試については、資格という格好で利用するのは待ちたいという議論をしたい。(民間試験の)問題点を十分に我々は指摘している。それを乗り越えた国の施策が出るのか待ちたい」などと話した。近く、学内の入試監理委員会(委員長・五神真総長)を開いて審議し、なるべく早く方針を公表したいという。

「大学で総合的な英語の能力を伸ばすのが大事」

関連して、高校での英語学習について「一番大事なのは高校の学びであり、民間試験はそれをサポートするものであるべきだ。大学としては、高校でできるだけ英語の能力を伸ばしていただき、大学でさらに4つの能力を含めた総合的な英語の能力を伸ばして卒業させることが大事」とも話した。学内では学生のコミュニケーション力や国際感覚を伸ばすための新たな制度を始めているという。(西健太郎)