10月20日(日)、鎌倉女子大学で行われた「第8回お弁当甲子園」の表彰式は、涼やかな秋晴れに恵まれた。この日、式に訪れたのは全国207校5,278作品の中から選ばれた最優秀賞、優秀賞、入選の受賞者と学校関係者たちだ。賑やかなお弁当のように、楽しく和やかな雰囲気の中で式は進められた。

5,278作品のトップは、引越した友人のために作ったお弁当

開会式の挨拶を行ったのは審査委員長を務めた吉田啓子教授(同学家政学部長)だ。「本大会は写真と想いを込めた文章であらためてお弁当について考えてもらおうと開催し、今年で8回目を迎えました。自分が選ばれると思っていましたか?」との問いかけに、遠慮がちに首をふる高校生たち。「高校生らしいこと、シンプルだけどダイナミックなものが選ばれました。友人や大切な人への想いを文章にするのは難しいことですが、1枚の紙の中に思いを込められることはすばらしいこと。自信をもってください」

第8回お弁当甲子園表彰式

表彰状授与では、緊張した面持ちで一人ひとり前に出て、会場から拍手を受けながら賞状を受けとった。授与が終わると、最優秀賞の江内田諭さん(福岡・香椎高校1年)による、作品についての発表が行われた。「引越した友達のために一生懸命つくったお弁当を評価してもらえたことがうれしいです。この賞を君のおかげでとれたよと伝えたいと思います」と語ってくれた。

緊張した面持ちで賞状を受け取る江内田諭さん

上位作品の受賞のポイントは?

審査員講評では、高橋ひとみ准教授が「最優秀賞は引越した友人が、部活の時にいつも一口くれた『思い出弁当』。友人の『成長を問う』という文章が魅力的でした」と伝えた。優秀賞は長井太優さん(群馬・高崎高校1年)の『個性あふれた!とっておきの委員長弁当』と若林花音さん(神奈川・日本大学藤沢高校2年)の『親子代々うめ弁当』だ。高橋准教授は「長井さんのお弁当は担任と副担任が海苔で表現されていて、こういう人いるなあと想像できるお弁当」と一人ひとりの作品について評価した。

さらに「サラメシ」(NHK)でお弁当ハンターとして活躍している写真家・阿部了氏が受賞者全員に質問しながら語りかけた。「どこから来たの?」「みんなに何と呼ばれているの?」「部活は何を?」といった質問に、いつの間にか会場は笑いに満ち、打ち解けた雰囲気になっていた。

特別審査委員の阿部了さん
阿部さんの問いかけに笑顔で応える受賞者たち

「誰かを想う気持ち」を大切にお弁当作りを

その後、キャンパス見学を経て、懇親会が行われた。お弁当甲子園に熱心に取り組む高校に贈られる学校賞を受賞した福岡県立香椎高校の山口詩織先生(家庭科担当)は、「本校では食育を目的に1週間のうち1回、自分でお弁当を作る弁当週間を設け、さらに1年生は全員お弁当甲子園に参加しています。最初は面倒くさがりますが、やってみると互いのお弁当でコミュニケーションが生じ、楽しそうですよ」と話す。

おいしい料理を囲んだ懇親会
懇親会の様子

お弁当甲子園をきっかけに初めてお弁当を作った高校生もいれば、幼少時から料理をしていたという高校生もいて経験値はさまざまだ。けれど共通するのは、誰かを想う気持ちを込めたお弁当という点である。阿部氏に、応募するお弁当の撮影ポイントを尋ねると「お弁当に何が入っているかよく見えるようにすること」と教えてくれた。敷物や構図を凝るよりも大事だそうだ。阿部氏のアドバイスを参考に、また来年も多くの応募に期待したい。