箏と聞くと、優雅で、物静かなイメージを抱く人が多いのではないだろうか。橋本高校(和歌山)邦楽部は、良い意味でそんな固定観念を覆し、アグレッシブに練習を重ねている。高校文化部の全国大会で毎年夏に行われる「全国高校総合文化祭」で優秀賞を受賞した部員たちに話を聞いた。(文・写真 中田宗孝)

音が力強いのが強み

1つの物語を創作するかのように音色を奏でた(8月、国立劇場で行われた東京公演リハーサル)

全国大会では演奏曲「絃歌(げんか)」を披露した。中盤では、部長の西本爽帆さん(2年)ら3人の奏者による独奏がある。このパートは、他の奏者以上の練習量と表現力が求められたという。前部長の森本実里さん(3年)は、「独奏の3人だけで一生懸命に練習する姿をずっと見てきたんです。全国の舞台では練習の成果が伝わる音を奏でてくれました」と語る。

森本さん(右)と西本さん(8月、国立劇場で行われた東京公演リハーサル)

実は、部員たちが選曲した「絃歌」は、2014年の全国大会で同部が日本一に輝いた楽曲だ。「先輩たちに続きたい思いもあり、この曲に挑戦したんです」(森本さん)。部の先輩が演奏した「絃歌」を聞い込んで、「カッコいいなと感じる部分は演奏に取り入れた」(西本さん)。そして、演奏には自分たちの強みも加えた。「私たちの『絃歌』は、1音1音が力強い。全国に懸ける、部員の思いを全部乗せた音なんです」(西本さん)

合言葉は「やる気、元気、根性」

橋本高校邦楽部(8月、国立劇場で行われた東京公演リハーサル)

練習は、「やる気、元気、根性」の合言葉で乗り越えてきた。部員たちに練習疲れが見えた時、演奏が上手くいかずに部全体が気落ちした時、誰からともなく「やる気やー!」との声が響く。その合言葉で部員は何度も立ち直った。森本さんは、「私は箏を始めた頃から全国の舞台に立つことが夢でした。そこで最高の演奏ができてうれしい」と、万感の思いをにじませた。