「文章力に自信がない」「どう論じればいいのか分からない」と大学入試の小論文の書き方に苦手意識を持つ高校生は多い。小論文対策に励む際の大事なポイントや上達へのアドバイスを、駿台予備学校で論文科講師を務める松井賢太郎先生に聞いた。(構成・中田宗孝)

Q.小論文を書くうえでの注意点は?

A.内容で勝負。推敲して「他者の視点」を得よう

 

NGワードを気にしすぎないで

 

私は受験生たちに「小論文には書き方のマニュアルはないよ」とまず伝えている。小論文対策を記した参考書には、小論文を書く際に注意すべき最低限の文章の作法がいろいろ書いてある。

例えば、「~と思う」は使ってはいけない、文末表現に「~である」ばかりを多用しないなどだ。これらを絶対に使ってはいけないかと言えば、そうではない。「~と思う」が好ましくないと言われるのは、「感想を述べるな。自分の意見を言おう」ということだ。小論文の中に自分の意見があり、その根拠が文章の中で提示されているのであれば、文中に「~と思う」を使おうが、「~である」の続く文章であろうが合否に関係ない。

小論文は論じる内容で勝負なのだ。「すごい」「びっくり」といった砕けた表現も使ってはいけないと記す参考書もあるが、私としては許容範囲の表現。小論文でのNGワードはあまり気にせず、中身のある文章になるように心掛けてほしい。

推敲して他者の視点で自分の文章を読もう

小論文を書きあげたら、内容の添削(推敲(すいこう))をしよう。私は「小論文は1人でなく2人で書くべき」と考える。ここで言う2人とは「自己内他者」のこと。自分が書いた小論文の内容を他人になったつもりで読んでみて「君の意見はここがおかしいんじゃない?」と自分の中で対話し、添削する力を養ってほしいのだ。

自己内他者の育て方は、書いた小論文を誰かに添削してもらうこと。例えば、学校の先生は身近な自己内他者のお手本になる。小論文を読んだ先生から添削が入り、指摘された部分を反省して内容を修正する。これを繰り返すことで、先生に添削してもらわなくても思考が深まり「こう論じると、こんなツッコミが入るかもしれないな」と、自分1人で添削ができるようになる。

反対意見も拒絶せずに受け止める

小論文対策の参考書には「確かに~だ。しかし~」を用いて要約しようとある。これは「確かに」「しかし」を文中に必ず盛り込むというのではなく、「異論を意識・想定しよう」ということ。

小論文では、賛成か反対か、意見が分かれる問題が出題される。小論文を書くと、つい自分の主張をかたくなに繰り返す人がいる。たとえ異論を想定しても、自分の主張ばかりを述べていては小論文の内容は深まらない。自分と違う意見や批判は一度受け止める必要がある。「小論文は他者との対話である」と意識してほしい。

異論に答えるということは、反論することだとは限らない。自分の主張を一部修正するという対応もありうる。さまざまな意見や視点をあわせて自分の考えを深めたうえで文書を書いていくことが大切だ。

 

まつい・けんたろう

小論文の過去問題を実際に書いてみる実践重視の授業を実施。何度も書きながら自分なりの小論文の書き方を見つけられるよう導く