全国高校総体(インターハイ)陸上の男子三段跳び決勝が2019年8月7日に沖縄県沖縄市のタピック県総ひやごんスタジアムで行われ、前回7位の田中宏祐(大阪・摂津3年)が高校歴代10位タイとなる15メートル75(向かい風0.3メートル)を跳び、初優勝を果たした。(文・小野哲史、写真・幡原裕治)

「体重オーバー」から盛り返す

インターハイ陸上男子三段跳びで優勝した田中宏祐

今季は序盤から思うように記録を伸ばせなかった。一つは「冬季の体重オーバー」が原因だった。「体重を増やすように言われて、無理に食べ過ぎました。昨季より10キロぐらい増えて、動きにキレがなくなってしまいました」と田中。また、体の各部をトレーニングで鍛え、「それぞれに強くなってはいたけれど、それらをうまく合わせられなかった」こともある。

そうした中でも徐々に調子を上げて迎えたインターハイ。決勝では「3回目までに15メートル60ぐらいを跳んで勝負を決める」つもりだった。しかし、今度は「調子が良すぎて」うまく合わず、15メートル24(追い風3.2メートル)でトップには立ったものの、2位とは1センチ、3位とは3センチという僅差。勝敗という点でも、まったく安心できなかった。

それでも他の選手たちも記録を伸ばせず、田中の優勝が決定。その直後の最終跳躍で、会心のジャンプが飛び出した。「優勝が決まっていたので、吹っ切れて思い切り跳ぶことができました。5回目まではホップ、ステップがあまりかみ合っていませんでしたが、最後はかみあったので、向かい風でも記録が出たのだと思います」

ライバルがいたから「ここまで来られた」

インターハイ陸上男子三段跳びで優勝した田中宏祐

身近にいるライバルの存在が田中のモチベーションになっている。同じ大阪の井村慧士(太成学院大3年)だ。田中が調子の上がらなかった5月の府大会で、「目の前で(高校歴代4位の)15メートル80を跳ばれ、ものすごく悔しかった」と話し、近畿大会でも敗れた。しかし今大会、ランキング1位で優勝候補筆頭だった井村は、まさかの予選敗退。「ずっと『インターハイで優勝争いをしよう』と言ってきた。慧士が落ちたのなら、僕が絶対にあいつの分まで1位を獲らないといけない」と、より一層、勝ちたい思いが強くなった。

「大阪に慧士がいたおかげで、僕もここまで来られたと思っています。ライバル心もあるけれど、感謝もしています」

インターハイを最高の形で終えた田中。しかし、井村との良きライバル関係はこれからも続いていく。