理学に興味があるけれど、実際にどんなことを学ぶのかイメージが湧かない…。そんな高校生に向けて、千葉大学理学部で教える村田武士教授に、理学部についての疑問に答えてもらった。(安永美穂)

Q.理学部ならではのやりがいや魅力を教えてください。

A.一つのアイデアで新しいものを生み出せる無限の可能性がある。

他分野と共同で研究が進む 命救う発見の可能性も

理学の領域では今なお分からないことがたくさんありますが、これまでの研究により、応用研究を進める上で必要なデータや情報はかなり蓄積されてきました。これからは過去の研究により明らかになったことを応用すれば、アイデア次第で新しいものを生み出していける時代だといえます。

最先端の研究の一例を挙げると、生物の分野では、何もないところから生物を生み出す人工細胞の研究が進んでいます。化学の分野では、新しい機能をもつたんぱく質を人工的につくることで、病気を治せるようにする研究も進められています。

また、病気の診断・治療に人工知能(AI)を活用することで病気の見落としをなくし、全自動で治療ができる仕組みづくりも進行中です。これは、数学・情報、医学、機械工学といった分野を融合した研究だといえます。

理学の領域では、新薬の開発につながる新しい化合物を一つ生み出すことができれば、多くの人を救うことができます。ベンチャー企業を興して、世界を舞台にビジネスを広げていくことも夢ではありません。一つのアイデアで全てが変わるということが起こり得るのが理学の領域であり、それだけ人の役に立つものを生み出せる可能性がある学問だといえるでしょう。

村田武士教授(千葉大学大学院理学研究院化学研究部門教授)

 

むらた・たけし 浜松日体高校(静岡)出身。東京理科大学基礎工学部卒。東京理科大学大学院基礎工学研究科博士課程修了。工学博士。専門は生体構造化学。創薬につながるタンパク質の構造や機能の解明に取り組む。