【強さのヒミツ69】埼玉・山村学園 硬式野球部

初出場した5月の春季関東大会で4強入りし、悲願の甲子園出場を目指す山村学園(埼玉)硬式野球部。絶対的なエース・和田朋也(3年)の存在が大きいが、県内上位校と互角以上に渡り合えるようになった要因は他にもある。ウエートトレーニングを年間通して行うことで、個々の打力が向上し、それが近年の躍進を支えているのだ。 (文・写真 小野哲史)

筋トレで「打球が飛ぶ」

ウエートトレーニングは一般的にシーズンオフの冬季に、基礎体力向上を目的に行われる。だが、山村学園ではシーズン中も変わらず行う。岡野泰崇監督の「スイングがきれいでも力がなければボールは飛ばない。体を大きくしてパワーを生かすのが重要」という考えからだ。

部員全員が同時にグラウンドで練習できないため、約半数はグラウンドの周りでウエートやティーバッティングなどのトレーニングを黙々とこなす。

主将の坂上翔悟(3年)は、約2年間で体重が8キロ増えた。「筋肉がついてスイングスピードが上がり、逆方向にも打球がよく飛ぶようになった」と手応えを感じている。また、ティーバッティングでは、重く長い木製バットを使用。「金属と違い、木は芯に当てないと良い感触を得られない。芯に当てることを意識しています」

実戦練習を重視

季節を問わずに実戦練習を行うのも特徴的だ。冬季もチームを4つに分け、総当たりで試合形式を繰り返す。12月からの3カ月間で、打者なら100打席立ち、投手なら100イニングを投げる。それによって、公式戦での登録メンバーは「たまたま良いプレーができた」という偶然性が排除された上で決められていく。試合形式は個人、あるいはチームでテーマを設定するため、本番さながらの雰囲気がある。正捕手の橋本大樹(3年)は「一つ一つのプレーを正確にし、『いつも』のレベルを上げる。大会でもその通りやれば、ミスはしないし、力を発揮できるはず」と話す。

夏季県大会を約1カ月後に控えた取材日は、紅白戦の後、ノックで練習を締めくくった。ノックも2人がランダムなコースに間髪入れずに打つため、選手は最後の一球まで集中力を切らさなかった。

ウエートトレーニング

 

グラウンドで練習していない時間はウエートトレーニングを行う。日頃の食事も意識しながら、選手個々に目標体重が決められている

 

 

ティーバッティング

 

ティーバッティングは金属バットよりも長く重い木製を使う。負荷がかかる加圧バンドを太ももに巻き、1球打つたびに屈伸運動を入れる。10スイングを1セット行うが、見た目以上にハードだ

 

実戦練習

 

季節を問わず行われる実戦練習。この日はレギュラー組対ベンチ入り候補メンバーが対戦、本番の試合のような緊張感が漂っていた

 

 

取材日の練習の流れ

   16:00ごろ
グラウンドに集合し、ミーティング
   16:15 ~
ウオーミングアップ(体操、キャッチボールなど)
   16:40 ~
Aチームは紅白戦(投手5人が2イニングずつ投げて10回まで実施)。それ以外はウエートトレーニングやティーバッティング
   19:30すぎ
ノック
   20:00ごろ
練習終了

TEAM DATA

 

2008年創部。部員105人(3年生34人、2年生34人、1年生31人、マネジャー6人)。埼玉県大会では17年夏季と秋季、18年春季に4強、19年春季3位。練習場所は野田グラウンド。部訓「一球入魂快打洗心」。岡野監督の大学の先輩で元プロ野球選手の矢作公一氏が5年前から週2回、臨時コーチを務めている。