科学者が警鐘鳴らす

世界の生態系はかつてない危機にさらされており、このままでは人類の未来に大きな悪影響が出る―。世界の科学者でつくる国際組織「政府間科学政策プラットホーム(IPBES)」はこのほど、「世界で100万種の動植物が絶滅の危機に瀕(ひん)している」とする報告書を発表、急速に進む生態系破壊に警鐘を鳴らした。生物多様性とそれが人間にもたらす自然の恵みに関する総合評価で、地球規模の総合的な評価報告書は初めて。

温暖化やプラごみが影響

 

報告書によると、種の絶滅の速度は過去1000万年の平均と比べて数十~数百倍と推定され、評価対象の4分の1に当たる100万種が絶滅の危機に直面。陸上の50万種は生息地が脅かされ、両生類の30%以上、サメと海洋哺乳類のそれぞれ30%程度に絶滅の恐れがある。

地球温暖化の影響にも言及。「パリ協定」の目標を達成し産業革命前と比べた気温上昇を2度に抑えても、サンゴ礁の面積は1%未満まで縮小すると予測。また海洋プラスチック汚染は1980年から10倍に増え、ウミガメや海鳥、海洋哺乳類など260種以上に悪影響を及ぼしていると分析した。

さらに世界の陸地の75%が大幅に改変され、湿地は85%が消失し、海洋の66%が人の活動の影響を強く受けているという。

国連総長「緊急対策を」

国連のグテーレス事務総長は「私たちが飲む水、食料、吸い込む空気の質はすべて自然界を健全に保つことに依存している。かけがえのない地球上の重要な生命の綱を守るための緊急対策を採るよう強く求める」と各国に呼び掛けた。