矢ヶ部航投手

龍谷(佐賀)野球部が、4月の春季九州高校野球大会で27年ぶりの優勝を決めた。強豪を破って九州ナンバーワンの座を手にし、20年ぶりの甲子園出場が射程に入ってきた。
(文・写真・南隆洋)

接戦・逆転、粘りの勝利

九州大会は、佐賀県大会2位での出場。2回戦で、今春の選抜大会に出場した優勝候補の神村学園(鹿児島)に1-5から逆転勝利して勢いづいた。3回戦で福岡工大城東(福岡)に1-3から逆転勝ち。さらに準決勝、九州国際大付(福岡)との打ち合いを8-6で制し、決勝では選抜出場の九産大九州を4-3で下した。

レギュラーのほとんどが身長160センチ台と小粒。グラウンドは他部と共用で、夜間照明も暗く、決して恵まれた環境ではない。だが、学校は佐賀城に近接しており、お堀の周りの公園内が絶好のランニングコースになっている。

徳山誠一朗監督は今冬、部員に徹底した走り込みを課した。

「きつい練習で頑張った姿を見せろ」

800メートルのインターバル走5、6本、さらに400メートル、200メートルのダッシュ各10本。「自分に限界を決めず、ギリギリに挑め」「9点取られても、次の攻撃で10点取ればいい。野球は1点でも多く取れば勝ちだ」と選手を鼓舞した。

冬のトレーニングが実る

池田智浩投手

冬場のトレーニングで、目立つ選手が出てきた。「毎日限界まで走った」という右腕・矢ヶ部航、左腕・池田智浩の2年生コンビだ。ともに身長160センチ台と小柄ながら、走り込みの成果でストレートとスライダーのキレが増し、打たせてとるピッチングを身に付けた。完投能力のある2人だが、九州大会では決勝以外は継投で試合をものにした。「リリーフが抑えてくれるので、思いっきり投げられる」と信頼し合う。

野手陣は、九州大会決勝で失策ゼロ。先頭打者の石橋優希(2年)は、九州大会の通算打率5割。選球眼も良く、準決勝では4つの四球を選んだ。「先頭が打てばチームが勢いづく。夏の県大会では出塁率6割を目指す」と意気込む。

北村大空(2年)は九州大会で6打点をたたき出し、ラッキーボーイとなった。2人とも思いきりのいいスイングが持ち味で、「相手投手をイメージして満足するまで素振りをする」地道な努力が実を結んできた。

日が暮れた後は、佐賀城のお堀の周囲を走り込む

現状維持では駄目

主将の松永丈治(3年)は「冬に走った結果が表れた。九州大会は思いっきりできた。しかし、他校も進化している。現状維持では駄目。もっと良くなるよう、みんなで頑張りたい」と、甲子園出場に向けて意気込む。

チームデータ 
 1907年創部。部員69人(3年生21人、2年生22人、1年生26人=マネジャー女子5人含む)。甲子園出場は春1回、夏2回。九州大会優勝2回。全体練習は毎日3時間。徳山監督は、同校が1995年夏に甲子園に出場した時の4番打者。明大、JR九州を経て、2008年から同校の指揮を執る。