熱の込もった立ち稽古を終えた部長の荒川仁実さん(右から3番目)たち

大船高校(神奈川)演劇部は、3月に開催された全国大会「春季全国高校演劇研究大会(春フェス)」(全国高校演劇協議会主催)に出場するなど、強豪で知られる。67人という大所帯の部の特色を生かし、上級生部員が演技や裏方の各部署のチーフとなり、部員主導で日々の練習に明け暮れる。(文・写真 中田宗孝)

3作品を同時に稽古

4月のある日の練習では、6月の文化祭と定期公演で上演する3作品の稽古や準備が同時進行していた。練習前の全体ミーティングを終えると、部員が一斉に散り、2・3年生が入部間もない1年生を指導したり、屋外で舞台セットの製作に励んだりと、どの持ち場も瞬く間に活気であふれた。廊下も練習場所となり、発声やダンス練習に興じる部員で混み合う。

舞台セットを作る部員たち

繰り返し演技指導

教室では、部長の荒川仁実さん(3年)が主演を務める同校オリジナルのミュージカル「黄昏エレベーター」(作:冨田のどかさん・3年)の稽古が進む。演技をじっくり見つめる演出担当の部員から、忌憚(きたん)のない演技指導が入った。「老人役なのにせりふの言い回しが爽やか好青年になっている。もっと声のトーンを優しく」「せりふの後、目が泳ぐのが気になる。伝える相手をきちんと見つめて」。受けた指摘を演者は柔軟に修正。より繊細な演出が再び入れば、別の演技で応える。その繰り返しで作品はより良く仕上がるという。

細かな演技指導にも臨機応変にこたえていく

共通の目標を胸に

演者は、台本を渡されたら3日以内に覚えてくるのが約束事だ。放課後の練習は、せりふを覚えているのは前提として、1シーンごとに演技する立ち稽古や通し稽古が始まる。「台本を頭に入れたり、演技プランを練ったりするのは、朝や昼休み、自宅での自主練習で補います」(大塚遊馬君・3年)

荒川さんは、先輩の演技を練習の合間に観察し、「参考になると感じた演技をまねてみる。それで演技力を磨きました」と振り返る。大会前には、全部員の意識を統一するための会議の時間を設ける。「部員が多いので、作品に懸ける気持ちがバラバラになりがち。そこで『審査員のための劇をしない!』『人を感動させる作品をつくろう!』と共通の目標を決め、結束してから大会本番に臨むんです」(荒川さん)

台本は渡されて3日以内に覚えてくる

Q&A 演劇が好きすぎる

Q. 部内ではやっていること

 気になった演劇脚本を入手して読むことです。その脚本を空き時間に遊び感覚で演じてみることもあります(大塚遊馬君・3年)

Q. 部員間で練習以外にどんなことを話しますか?

 僕らは3年なので、卒業後の進路についての話題が多いのですが、なぜだか決まって話の結末は、演劇の話になってます(笑)。演劇が好きすぎる部員ばかりなんです(大塚遊馬君・3年)

Q. 顧問の宮澤俊彦先生への思いを一言教えてください。

 部員主導で練習を進めるとはいえ、やはり陰で支えてくれる宮澤先生がいてこそなんです。私たちが本当に困った時に、的確な助言をくださり、さり気なく助けてくれます(荒川仁実さん・3年)

【部活データ】創部年不明。部員67人(3年生22人、2年生23人、1年生22人)。ほぼ毎日活動。校内外で年間14~18公演行う。2019年、第13回春季全国高校演劇研究大会出場。全国高校総合文化祭演劇部門には3度出場。