麻生太郎財務相は4月、紙幣を全面的に刷新すると発表した。

1万円札の肖像画には「日本資本主義の父」とされ日本経済の近代化を進めた渋沢栄一、5千円札は6歳で岩倉使節団に加わった日本で最初の女子留学生の一人で津田塾大を創設した津田梅子、千円札は日本の「近代医学の父」として知られ破傷風の血清療法を確立した北里柴三郎に決まった。

デザイン変え偽造防止

紙幣の正式名称は日本銀行券。日銀だけに発行が認められ、印刷は国立印刷局に委託している。偽造防止のため定期的にデザインを変えており、新デザインの紙幣は2024年度上期から発行する。今回の刷新は04年以来20年ぶり。2千円札は流通枚数が少なく、偽造防止の必要性が低いとして刷新は見送られた。

500円硬貨は、素材に現在のニッケル黄銅に加えて白銅と銅を用い、硬貨の周りを別の素材で囲む「2色3層構造」とする。

最新技術を導入

新紙幣には偽造防止のため高精細の「すき入れ」模様などの最新技術を導入。紙面を光に透かして見ると図柄が浮かび上がる技術で、角度を変えることでデザインが変化するホログラムには肖像の立体的な画像の向きが変わって見える最先端の技術が取り入れられる。また、多くの人にとって使いやすいように額面の数字を大型化し、指の感触で紙幣の違いを認識できる工夫も施す。

紙幣を識別するための固有の番号「記番号」は現行の最大9桁から10桁に増える。

経済効果1兆円以上?

デザイン刷新により新紙幣と硬貨の製造に加え、現金自動預払機(ATM)や自動販売機改修などに伴う特需で、新たに総額1兆3千億円程度、国内総生産(GDP)比で0・2%程度の経済効果を生み出すとの試算もある。

新紙幣に採用されるのはこんな人

 

1万円札
渋沢 栄一(しぶさわ・えいいち)

1840年、埼玉県生まれ。日本で初めての商業銀行「第一国立銀行」の創立に関わり、頭取を務めた。1931年に91歳で死去

 

5000円札
津田 梅子(つだ・うめこ)

1864年、東京都生まれ。71年、日本で最初の女子留学生として渡米。帰国後に津田塾大の前身「女子英学塾」を創立し、女子教育に力を入れる。1929年に64歳で死去

 

1000円札
北里 柴三郎(きたさと・しばさぶろう)

1853年、熊本県生まれ。ドイツで細菌学者のロベルト・コッホに師事し、破傷風の血清療法を開発した。現在の北里研究所や慶応大医学部を設立。1931年に78歳で死去