バンドの練習中を取材。部長の森田朱理さん(後列左)と副部長の久保綾音さん(後列右)は「部を引っ張っていきたい」と意気込む

桜塚高校(大阪)軽音楽部は、昨年の第42回全国高校総合文化祭(2018信州総文祭)軽音楽部門で最優秀賞に輝くなど、毎年さまざまな大会に出場し、好成績を収めている。定時制課程があるため、平日の活動時間は午後5時までの1時間半。その短さを、部員間のコミュニケーションを密にした学び合いで補い、技術の向上を図っている。 (文・写真 木和田志乃)

部員全員で発声練習

放課後、視聴覚室から「1と2と3と4と」と拍を数える声が聞こえてきた。部員全員でメトロノームに合わせて手をたたいて、リズムを正確に刻む練習から活動が始まる。続いてキーボードに合わせて全員で発声練習を行う。「ボーカル以外のメンバーもコーラスとして歌う機会があります。普段から声を出していないと歌えません」(部長の森田朱理さん・2年)。活動の中心はバンドごとの練習だが、部員全員が集まる場もつくっているという。

全体での練習が終わるとバンドごとの練習が始まる。21組のバンドが視聴覚室、教室など7カ所を交代で使うため、1バンドの練習時間はわずか25分間。副部長の久保綾音さん(2年)は「この時間は楽器間の音量のバランス、音のズレなどを意識して合わせています」と話す。

リズムを取る練習は部員全員で行う

ネットの掲示板を利用

バンドでの練習が終わると、個人練習とともに積極的に他バンドの練習を見学する。「演奏を録音してすぐに聴き返しているのを見て、自分たちもまねしました」(久保さん)。他のバンドのアイデアや演奏方法は、どんどん取り入れるという。

振り返りはインターネット上の公開掲示板を利用する。「ドラムもたたき方次第で曲の印象が変わるのでかなり悩みました」「もっとライブをする時の動きなどを考えながら練習したい」など、部員たちは1日の練習の感想や課題を書き込んで共有し、次の練習に生かしている。

メンバーは抽選で決定

大会出場を目指すバンドメンバーは希望者から選ばれるが、それとは別に全員が「レギュラーバンド」と呼ばれるバンド1つに所属する。メンバーは抽選で決められ、約4カ月ごとに組み替える。

それにより「多くの人と演奏や話をする機会が増えて、それぞれの人から別のことを学べます」(久保さん)、「曲を仕上げる期限を考えて集中して練習できます」(森田さん)とメリットを感じている。また、自分たちの練習が見られる緊張感もある。課題を共有する、他バンドの長所を取り入れる、緊張感を持つ。これらが密度の濃い練習を生み、活動時間の短さを補っている。

間近に迫った部内ライブを意識し、アレンジを工夫し笑顔で練習

地域に根ざして活動

同校では地域のイベントにも多数出演する。そこで披露するのは、7年前に制作して受け継いできた地元商店街のイメージソング「おかまち桜いろ」だ。今も毎日、商店街で流れ、イベントでは一緒に歌う人もいるほど親しまれている。昨年は大阪万博誘致応援ソング「Yume色OSAKA」も作った。前部長でボーカルの小幡璃々子さん(3年)が「大阪のいいところを伝えたい」と作詞作曲をして動画投稿サイトに投稿し、開催歓迎のムードを盛り上げた。

【部活動データ】部員79人(2年生36人、1年生43人)。モットーは「遅刻厳禁、あいさつ励行、感謝の気持ちを忘れない」。教室や廊下など校内の清掃にも取り組む。全国高校軽音フェスティバル(大阪)は2012年から7年連続出場、うち最優秀賞3回。