塚本君(左)と岡本君。手にしているのは自作した実験装置

掛川西高校(静岡)自然科学部の岡本優真君と塚本颯君(ともに2年)は、大気中から鳥のDNAを採取する方法を見つけ、昨年12月、第16回高校生科学技術チャレンジ(朝日新聞社など主催)で文部科学大臣賞を受賞した。 (山口佳子)

生物のDNAは、皮脂の表面が剝がれ落ちたり、排せつ物などに付着したりして、生息する河川や土壌などの環境に排出される。それらは総称して「環境DNA」と呼ばれ、生息調査の新たな手法として注目を集めている。

実験装置を自作

同部は、水中の環境DNAからコイ科のヤリタナゴの生息調査を行ってきた。2人は、水中だけでなく大気中の環境DNA(空中DNA)を検出することも可能ではないかと考えた。

2人は、鳥が羽ばたく時に落とす、わずかな皮脂や羽毛表面の微粒子に着目。夜行性のため目視では個体数が把握しにくいなど、生息調査が難しいとされるフクロウを研究対象にすることを決めた。

国内外の文献を調べても先行研究が見当たらなかったため、装置の開発から試行錯誤を重ねた。空中の粒子を、ポンプを使って溶液に取り込む装置を、3Dプリンターや身近な材料を活用して1つ3000円弱で作った。溶液は、DNAの保持に適しており、消毒薬として薬局で手に入りやすいオスバンを使用することにした。

インフルの流行予測に期待

昨年7月から8月にかけて掛川市周辺の山や神社などに計14回装置を設置、このうち5試料からフクロウのDNAが検出された。ムクドリ、アオバズクなど他の鳥でも検証実験を行い、空中DNAが検出できることを証明した。塚本君は「空中の環境DNAが検出できることが分かり、今まで扱えなかった鳥類の調査にも活用できる」と話す。さらに岡本君は「将来的には、空中のインフルエンザウイルスのDNAを検出することで、患者数が増える前に流行予測が出せるなど、より広い分野での応用が期待できる」と展望を語った。