試験で悪い点を取ってしまった、自分のミスで試合に負けてしまった……。失敗をいつまでも引きずると、ここぞという場面で力を発揮できなくなってしまう。失敗から素早く立ち直る方法を、ポジティブに生きるための心理学の専門家・久世浩司さんにアドバイスしてもらった。(中田宗孝)

失敗した現実を受け止める

―失敗をしてもすぐに立ち直れる人、立ち直れない人の特徴は?

大きな失敗をした現実をしっかり直視して受け止めた上で、気持ちを切り替え、正しいアクション(行動)を起こせる人が「立ち直りの早い人」の特徴です。一方、失敗したことを引きずって落ち込み続けてしまう、悩みや不安な感情を心にため込んでしまいがちなタイプは「立ち直りの遅い人」といえるでしょう。

―自らの失敗を顧みることが早く立ち直るために必要なのですね。

そうです。誰でも失敗したり気がめいったりすることはあるので、それ自体はまったく問題ではありません。ただ、失敗してしまったという事実を、きちんと反省するなりして、自分の中で一度受け止めておくことは、立ち直るための大切なプロセス。失敗の事実にふたをして、ネガティブな感情を内側にため込むのは、自分の心に負担をかけるだけでなく、体の健康状態まで悪化させてしまう場合もあるのでやめましょう。

立ち直る力を育む

―失敗から気持ちを切り替えるために必要な心の在り方とは?

失敗して落ち込んだ状態から「立ち直る力」「回復する力」を心理学では「レジリエンス」と呼びます。レジリエンスは特別なスキルではなく、大人にも高校生にも、もともと備わっている心の力です。

失敗体験からなかなか立ち直れない人でもレジリエンスを持っていますので、この力を引き出すトレーニングをすればよいのです。自分のレジリエンスを上手にコントロールして普段の自分に回復させる。これが立ち直った状態ということになります。

自分に合った気晴らしを

 

―レジリエンスを高める、具体的な方法は?

「気晴らし」をしましょう。ジョギングや軽いスポーツといった体を使った運動をして、汗をかきながら気持ちを切り替えてみましょう。また、音楽を聴いたり、「ひとりカラオケ」をしたりするのもとてもよいです。

あとは、自分のマイナスな気持ちを内側にとどめず、紙に書き出してみるのも効果があります。自分がその時に悩んでいることを感情の赴くままに書き記すと、心が整理され、落ち着きを取り戻せます。

「心がざわついているな」「ネガティブな思考になっているな」と感じたら、これらの方法の中から自分の気持ちを安定させられる気晴らし法を実践しましょう。

失敗して落ち込んだら気晴らしをして立ち直る(自分の元の状態に回復させる)。この繰り返し。このパターンを自分の習慣にできれば、失敗からの立ち直りが早くなるでしょう。

助言もらう相手を選ぼう

―自分だけで失敗を抱えないようにするには?

自分と同じ目線に立って気持ちを共感して助言をもらえるようなサポーターを見つけておくのも大切です。孤立して一人で悩みや不安を抱え込まないというのも立ち直りが早い人の特徴の一つ。これを「支援希求力」と呼びます。

ただし、悪気はなくても共感する前に上から目線で指導する人もいますので、相談相手は慎重に選びましょう。普段から、クラスメート、部活の仲間、保護者と良好な関係を築いておくとよいでしょう。

 

久世浩司さん

くぜ・こうじ ポジティブサイコロジースクール代表。大垣北高校(岐阜)卒。慶應義塾大学卒業後、一般企業に勤務。その後、レジリエンスを活用したスクール設立や企業人材の育成に従事。「『レジリエンス』の鍛え方」(実業之日本社)など著書多数。