藤原和博さんは、リクルート社で営業や出版社の創業などを手掛けた後、中学・高校の校長を務めた異色のキャリアで知られる。これまで3000冊以上の本を読み、仕事に生かしてきたという。今回は、どうやったら読書を習慣にできるのか聞いた。(野口涼)=4回連載

ふじはら・かずひろ 教育改革実践家。東京大学経済学部卒業後、リクルート入社。メディアファクトリー(出版社)の創業などを手掛けた。杉並区立和田中学校や奈良市立一条高校で校長を務めた。「本を読む人だけが手にするもの」(日本実業出版社)など著書多数。

自分自身に強制しよう

――どうしたら藤原さんのように読書家になれますか?

本を読んだ方がいいとは分かっていても、きっかけがつかめないと焦りを感じている高校生もいるはずです。では、読書の習慣は、どのようにすれば身につくのでしょうか。小学校の「朝読書」のような半ば強制的な読書体験も有効だと思います。仕方なく読みはじめた本がとても面白く、読書にハマるきっかけになるかもしれないからです。

とはいえ高校に朝読書はあまりありませんから、自分で自分に強制するしかありません。週に1冊でも月に1冊でもかまいません。とにかく読むと決めて、決めたらそれを守るようにしてください。

――どんな本から読めばよいでしょうか?

 最初に手にとる本はなんでもかまいません。読書というとなぜか「古典的名作」に触れなければならないと思い込みがちですが、私自身、学校の課題図書だった名作のあまりのつまらなさが、成長期に読書習慣が付かなかった理由のひとつだったと考えています。

もし皆さんが読書をしようと思い立ち、何を読んでいいか分からなければ、まずは自分の興味のある分野の本を選んではどうでしょうか。ミステリーでもファンタジーでもかまいません。将棋が好きなら将棋の、陸上部なら陸上を題材にした小説やノンフィクションがいくらでもあります。高校生の段階では、まずは「好きなもの」から入ればいい。バランスは後からいくらでも取ることができるのです。

漫画でもラノベでもいい

――高校世代が特に読んだほうがよいジャンルの本はありますか?

中学校の校長を務めていたころ、図書館に1500冊、校長室に300冊のマンガを置いていました。給食を食べ終えた生徒たちが、毎日20人くらい校長室に来て、「寄生獣」などのマンガを立ち読みする様子は、なかなか面白いものだったと思います。夢中になって読めるのであれば、たとえマンガでもライトノベルでもかまいません。

繰り返しになりますが、高校生の段階では、好きなものに向かっていけばいい。バランスは後からいくらでも取ればいいのです。