SSH生徒研究発表会で科学技術振興機構理事長賞を受けた

向陽高校(愛知)の酒向実里さんと曽根琉生君(ともに3年)は、ユリの受粉の仕組みを研究した。

雌しべの先端(柱頭)に付いた花粉は発芽して管状に伸び、花柱を通って胚珠に達する。この管を花粉管という。昨年度の先輩たちは、ユリの花柱の中空部分の液に「花粉管を誘引する物質」が含まれていることを見つけた。

2人は、なぜ花粉管は誘引物質がある領域にとどまらず、胚珠に向かって伸びていくのか疑問に思った。そこで花粉管が胚珠まで伸びる仕組みを調べた。

雌しべの構造

花粉管の謎を追う

2人は「花柱に花粉管が伸びる方向を決める性質があるのではないか」「花粉管が誘引物質の濃度の変化に反応しているのではないか」などと仮説を立てて実験を繰り返した。花粉管は最初、誘引物質のある領域に向かって伸びるが、4~7時間たつと不規則に伸びていく様子が観察された。また、花柱内を伸びる花粉管は、誘引物質のある領域を10時間ほどで通過することが分かった。

ここで2人は、誘引物質のある領域を通過するには一定の時間が必要だと気づき、研究を進めた。結果、花粉管は誘引物質に触れてから時間が経過すると誘引物質に反応する性質を失うため、花粉管は胚珠に向かうことができるという結論を導き出した。

酒向さんは「ユリには旬があるので花粉ができる時期が限られ、実験が進められないことがあって大変だった」と振り返る。曽根君は「受粉の仕組みが解明されれば、観賞用の花の品種改良などに利用できるかもしれない」と研究の深化を期待している。 (文・写真 木和田志乃)