山メシは自分たちで作るからこそおいしい

気候が爽やかになり、食べ物がおいしく感じられる季節がやってきた。おいしさをより求めるのなら、大自然に囲まれた中での食事が一番。今夏の全国高校総体(インターハイ)登山競技で3位に入った県立前橋(群馬)山岳部に、山で食べるご飯「山メシ」の魅力を聞いた。 (小野哲史)

山メシは「基本的にどんな料理でもおいしい」と語るのは、部長の狩野律斗君(2年)。山を登ってきたという充実感があり、「親や他の人ではなく、自分で作るので、いろいろな達成感が加わっておいしく感じられる」という。部で月1回程度行う登山では、4、5人のグループごとに1つのメニューを作ることが多い。料理など炊事は山岳競技で評価されるポイントでもある。「調味料を持っていき、自分好みの味にしたり、作った料理を交換し合ったりするのも楽しい」(田中亮輔君・2年)

絶景を見ながら山に登る

体力・疲労回復が大事

山メシは、体力を回復させ、疲労を翌日に残さないためにも、炭水化物とタンパク質を中心にとるのが望ましいという。牧山裕太君(2年)は以前、ビリヤニというインド風炊き込みご飯を作った際、「分量を間違えて激辛になってしまい、1年生たちが『辛い、辛い』と、あまり食べてくれなかった」と苦笑する。しかし、多少うまくいかなかったとしても、気心の知れた仲間と作り、食べるという行為自体に、スパイスのような効果があるのかもしれない。

失敗談といえば、佐藤勇斗君(2年)は「夏山に行ったとき、スープ用に持参した白菜を腐らせてしまった」ことがある。それからは料理の出来や安全面に関わる食品管理に気を遣い「肉は冷凍し、野菜は氷と一緒にして、保冷バッグに入れる」ようにしている。

山で調理する部員

ごみ減らす工夫を

食後は「食べ終わった食器にスープを入れて、汚れを落としながら飲めば、あとはキッチンペーパーで拭くだけ」(狩野君)で済む。自由に使える水があるとは限らない山では、そうした小さな工夫がごみの量を減らして自らの登山を楽にし、自然環境を保護する側面にもつながる。

とはいえ、それほど堅苦しく考える必要はない。「山は最高。山で食べるというだけでおいしいし、仲間と作ると良い思い出にもなります」(田中君)

【インターハイの登山競技】 1チーム4人で編成されるパーティーで3泊4日の登山を行う。体力や歩行技術、装備・撤収、炊事などが計100点満点で審査され、その得点を競う。安全登山に必要な技術および体力の定着という観点から実施され、生きる力が問われるスポーツとも言える。

【チームデータ】 創部から100年以上の歴史を誇る。部員24人(3年生8人、2年生4人、1年生12人)。5月のインターハイ県予選で3年連続6回目の優勝。活動日は火・木・金曜の放課後にランニングや筋トレ。月1回ほど主に県内の山を登ったり、夏休みや冬休みに山での合宿を行ったりしている。
常念岳に登山した部員たち