米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古(へのこ)への移設阻止を掲げ、反対運動の象徴的存在だった翁長雄志(おながたけし) 沖縄県知事が8月8日、膵臓(すいぞう)がんのため死去した。翁長氏死去に伴う知事選は9月30日に投開票される。選挙の争点にもなる辺野古移設とはどんな問題か。

 

賛否めぐり割れる民意

1995年に沖縄県で起きた米兵による少女暴行事件をきっかけに、日米両政府は96年、宜野湾市中心部の米軍普天間飛行場の返還と県内への移設で合意。日本政府は99年に名護市辺野古への移設を決定した。仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事は2013年、辺野古の予定地の埋め立てを承認したが、計画阻止を掲げ当選した翁長知事が15年に承認を取り消したことで国と県の法廷闘争に発展。16年に県の敗訴が確定している。

対米協調だった翁長氏

翁長氏はもともと、自民党県連幹事長などを務めた沖縄保守政治の重鎮で対米協調路線をとってきた。しかし、米兵の暴行事件や米軍ヘリの墜落など「基地の島」沖縄の不条理を目の当たりにし、14年知事選では「沖縄に新たな基地は造らせない」と公約、保革を超えた勢力「オール沖縄」を原動力に圧勝。以来、普天間の県内移設断念と輸送機オスプレイ配備撤回を求め、国と真正面から対峙(たいじ)してきた。

70%の米軍基地が集中

知事選は、移設を推進する安倍政権が支援する前宜野湾市長の佐喜真淳(さきまあつし)氏と、反対派が擁立した衆議院議員(沖縄3区)で自由党幹事長の玉城(たまき)デニー氏の事実上の一騎打ちとなる見込みだ。安倍晋三首相は「沖縄県民に寄り添っていく」と繰り返している。菅義偉官房長官は知事選について、辺野古移設ではなく、経済や福祉問題が争点になるとの考えを示す。

日本の国土面積の0.6%にすぎない沖縄には、在日米軍専用施設の70%以上が集中する。なぜ沖縄県民だけが日米同盟の過重な負担を強いられるのか――。翁長氏の切実な訴えを、沖縄県民だけでなく国民全体が考えなければならない。