部屋が散らかって勉強に集中できない、プリントがたまっていって整理できない……。そんな悩みを抱える高校生は多いだろう。「片付けのプロ(かたづけ士)」として講演や研修を行う小松易さんに、片付けを上手に行うコツを聞いた。(野口涼)

置き場所をすぐに決める

―片付けが得意な人、苦手な人の違いは?

片付けが得意な人は「すぐに」、苦手な人は「後で」と考えるのが特徴です。例えば、学校でプリントを手に入れたとしましょう。明暗を分けるのは帰宅後の習慣です。片付けが得意な人はプリントをかばんから取り出しながら、どこにどう片付けるべきかイメージします。

つまり捨てるのか、ファイリングするのか、誰かにあげるのかなどを手に持っている間に考え、すぐに行動するのです。このことを私は「空中戦(選)」と呼んでいます。

 一方、片付けが苦手な人がするのが「地上戦(選)」。手にしたプリントをどうするべきか考えることを怠り、そのへんに無意識に置いてしまうため、部屋は大混乱になります。その日のうちにかばんから出せばいい方で、実際には数週間後、かばんの底でぐちゃぐちゃになって見つかることもあるのでは。

私たちは日々、さまざまな物を扱っています。今すぐ空中戦(選)を習慣化することが「理想の部屋」を実現する第一歩といえるでしょう。

1カ所15分で整理しよう

―すでに散らかってしまっている部屋の片付け方は?

最初に「片付けの習慣化」についてお話ししました。一方で、散らかっている部屋を一念発起して片付けるのが「リセットの片付け」です。コツは「整理」と「整頓」を同時にやろうとしないことです。

最初にやるべきなのが「整理」。 具体的には、要らない物を捨てて数を減らします。整理は「1日1カ所15分」を目安に、以下の手順で行うといいでしょう。

まずは、その日片付ける場所を決めましょう。このとき、その場所にある物を全ていったん外に出すこと。自分に「片付けのスイッチ」が入りやすくなります。次に、自分なりの基準(マイルール)を決めて、 捨てる物、とっておく物を分けましょう。必要なのは白黒つける勇気と決断です。勉強に必要な物や洋服などは「使えるか使えないか」ではなく「使うか使わないか」を基準にするといいでしょう。整理の着地点は、残すと決めた物を元あった場所にただ戻すこと。これで終わりです。

 

心に余裕が生まれる

「1日1カ所15分」で部屋の整理が一巡したら、片付けの8割が終わったようなものです。いよいよ残した物をどこにどう置くか決めていく「整頓」を始めます。高校生が勉強するための部屋なら大切なのは美観より機能性。教科書や参考書を使いやすい、つまり出し入れしやすい状態にすることを意識しましょう。収納場所が複数の棚なら真ん中、奥行きがあるなら手前に「よく使う物」を置くのが鉄則です。

―片付けの効果は?

部屋がきれいだと心に余裕が生まれます。また、視覚情報を整えると集中力が上がることも言うまでもありません。片付けとは、その場所が 「やろうとしていることがかなう場所になっているかどうか」を点検する行為。片付けを通して自分の生活・勉強習慣を見直し、よりよい未来をつくり上げていきましょう。

 
小松易さん
こまつ・やすし 「片付けを通して人生を変える」をコンセプトにコンサルティングや研修、講演を行う。これまで延べ2500人以上に片付けを指導。著書は「たった1分で人生が変わる片づけの習慣」(中経出版)など。