八千代松陰戦でチーム最多となる26得点を挙げた小玉

実践学園(東京)の小玉大智(3年)が、1年ぶりにバスケットボールの全国大会に帰ってきた。

肉付きのいい体に、坊主頭とヘッドバンド。小学生のころから変わらないというそのスタイルは、一度見たら忘れられないインパクトがある。昨年のウインターカップはケガのためエントリーをはずれたが、筆者は複数の知人から「あの坊主でヘッドバンドの子はいないんですか?」と尋ねられている。

小玉はその個性的なルックスに加え、大きな声と笑顔で仲間を励ます姿も目を引く選手だった。しかしキャプテンとしてやってきたインターハイでは一転して、厳しい表情で黙々とプレーする姿が目立った。変貌ぶりに驚いた。

生真面目な性格の小玉は、うまくいかないことがあると気持ちが内へと閉じこもる傾向が強いのだという。「引退が近づいていくうちに『自分がやらなきゃ』という変なプレッシャーが生まれて…。この大会はいつも以上にそれを感じていました」。当然言葉が少なくなり、表情も堅くなる。

2回戦で優勝候補の福岡第一(福岡)を破る大金星を挙げたが、迎えた3回戦の八千代松陰(千葉)戦は、小玉のミスで延長戦にもつれ、68-72で敗れた。応援席からは何度も「タイチさん、スマイル!」という声が飛んだ。

表情は堅かったが、要所で後輩たちに言葉をかけた

笑顔は、小玉がプレーをするうえで大切にしているテーマ。作り笑顔であっても、とにかく笑う。笑えばポジティブになれる――。小玉はこれまでの経験からそのことをよく知っているが、今大会はそれでも表情を崩すことができなかった。「みんなに『スマイル』と言ってもらわないと前も向けないという感じでした」

上級生やキャプテンが大きな重圧を背負うのは、どのチームも、どの競技であっても同じだろう。小玉がそのプレッシャーを克服し、下級生のころよりも”強い笑顔”でチームを引っ張る姿を心待ちにしていたい。(文・写真 青木美帆)