部活や委員会、文化祭など、高校生活ではチームで物事を進める機会が多い。部長などを務める場合、どんな振る舞いをすれば「ついていきたい」と思われるリーダーになれるのだろうか。企業や教育の現場などでチームをつくるサポートをしている長尾彰さんに「完璧な人でなくても目指せるリーダーの在り方」を教えてもらった。 (安永美穂)

 
長尾彰さん
ながお・あきら 組織開発ファシリテーターとして、企業、団体、教育、スポーツの現場などで、約20年にわたり3000回を超える「チームづくり」のサポートを行っている。
 

無理にまとめなくてOK

―― チームワークを発揮するために部長などのリーダーに必要なことは?

メンバーそれぞれの違いを生かすことです。強みは一人一人みんな違います。自分ができないことは、できる人の力を借りればいい。そして、自分ができることで他の人を助けてあげればいい。それがチームの良さなので、無理にみんなをまとめようとする必要はありません。

―― リーダーになったら、まず何から始めればいいですか?

「なぜ、この部に入ったの?」という「なぜ」の部分をみんなで話し合いましょう。部活なら「試合で勝ちたい」「体を動かしたい」「友達と楽しく過ごしたい」など、いろいろな思いを持った人がいるはず。一人一人の「こうしたい」を認めると、各自が「やりたい」と思うことを行動に移せるようになり、チームの活動も活発になります。

「~すべき」を強制しない

―― 「ついていきたい」と思われるリーダーになるには?

自分と同じやり方を強制しないことが大切です。人は「外から与えられた目標」には本気になれないので、「~すべきだ」ということを押し付けると反発を招きやすくなります。

何かを決めるときも、いきなり多数決で決めずに、まずは「どうしたいか」を全員で話し合うこと。メンバーには「やる自由」も「やらない自由」もあります。その選択肢を奪わず、それぞれの人が選んだことをサポートするつもりで接していきましょう。

―― チーム内で意見の対立が起きたときは、どうすればいい?

立場が違えば、ものの見方が違うのは当然のこと。どちらかが間違っているわけではなく、「どちらも正しい」ので「解決しなければ」と思う必要はありません。

「AかBか」を選ばなくても、AとBの2つのグループに分かれて進める方法もあるし、AとBの共通点を生かしたCの方法を提案することもできます。無理に説得しようとせず、「どうしてそう思うのか」を聞いてみると、いろいろな選択肢が見えてくるはずです。

やる気1割増す声掛けを

―― やる気がないメンバーがいるときにできることは?

今の頑張りが「1」だとしたら、1割増しの「1.1」の頑張りができるような声掛けをしていきましょう。疲れたときに「だりぃな」と言う人ばかりだと、やる気がしぼんで1割減の「0.9」の頑張りしかできなくなりがちです。でも「疲れたけど、あとちょっとだけ頑張ろう」と言う人がいると、個々のメンバーが「1.1」の力を出せるようになり、チーム全体でも大きな力を発揮できます。

―― 「メンバーに嫌われるかも」と気になるときは?

「嫌われる」のではなく、「価値観が違うだけ」と考えましょう。お勧めなのは、部活のほかにクラスの友達や他校の友達もいるというように、校内・校外のいろいろなグループの人とつながりを持っておくこと。1つのグループの人間関係が気まずくなっても、他の友達がいれば「大丈夫」と思えます。

―― リーダーを支える立場の人ができることは?

自分が何をしたら、リーダーがもっと動きやすくなるかを考えて、実行してください。「いいリーダーは、自分たちメンバーが育てる」と思うことが大切です。

 
 
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 宇宙兄弟 「完璧なリーダー」は、もういらない。
(学研プラス、税抜き1400円)
 人気漫画「宇宙兄弟」を題材として、リーダーシップの在り方や、チームで成果を出すために大切なことを解説。