その日東京駅五時二十五分発
 西川美和著(新潮文庫、432円)

◆1日早い終戦記念日

19歳で召集され、無線送受信の練習中にいち早くポツダム宣言の内容を聞いた「ぼく」。8月15日午前5時25分発の東海道線。「ぼく」は1発の銃弾も放たず、軍隊生活も3カ月しか経験せず、広島へ帰郷。「ぼく」には、広島がどうなっているのか、想像もつかなかった。全てに乗り遅れた「ぼく」は、車窓から見える景色に日本の敗戦を感じていた。この小説を通して、「ぼく」が感じたことを、自分も体験したかのように感じた。
(児玉郁弥君・2年)

 

 

骸骨ビルの庭
 宮本輝著(上下巻、講談社文庫、各648円)

◆誰のために生きるのか

このビルには50歳前後の戦災孤児たちが住んでいる。老人の茂木は、親友でビルの持ち主でもある阿部とともに孤児たちの面倒を見てきた。だが阿部は、孤児の一人から性的虐待を受けていたと訴えられ、汚名をすすげないまま死んでいった……。戦争を経験した阿部と茂木が、他人のために生きるという気持ちを持ち続けたところに感動した。私たちが忘れている感謝の思いを呼び起こしてくれる小説だ。 (水野風汰君・2年)

 

 

あの夏の日
 葉祥明著(自由国民社、1728円)

◆変わりゆく日常

長崎の原爆をテーマにした絵本だ。空襲はあったものの、普通に暮らしていた長崎の人々の日常。それが1945年8月9日午前11時2分を境に、この世から一瞬にして消滅してしまった。原爆投下直前の和やかな日常。そして投下後の真っ暗で何もない長崎。その両方が絵によって色濃く描かれている。僕たち長崎に住む人たちは、夏になると原爆で亡くなった人たちのことを思い、平和な世界が続くことを祈る。 (川尻大輔君・3年)

 

 

ノベライズ この世界の片隅に
 こうの史代著、蒔田陽平著(双葉文庫、610円)

◆日常がどれだけ幸せか

広島で育った主人公・すず。周作と結婚し、呉で生活していた。戦時中で苦しい生活を強いられていたが、すずの元気な姿と明るさで何とか日々を乗り越えていた。戦争が激しくなり、空襲が増えてきた中、周作は戦争へ。だが、すずは周作のことを愛し、信じ続け、無事に帰ってくると願っていた。厳しい戦争を乗り越え「この世界の片隅に」愛し合う2人に感動した。 (小嶺賢人君・3年)

 

 

秘密のスイーツ
 林真理子著(ポプラ文庫、605円)

◆戦時中の生活って?

いじめが原因で不登校になった小学6年生の理沙。母とけんかし、家出と称して近くの神社に行く。母の携帯を隠すが、後に雨でぬれて壊れてしまわないか心配で電話をかける。誰も出るはずがない。「もしもし……」。電話に出た相手は昭和19年の学生だった。戦時中の暮らしを再認識しなければと強く感じた。 (田中逸樹君・3年)

 

 

娘よ、ここが長崎です 永井隆の遺児、茅乃の平和への祈り
 筒井茅乃著(くもん出版、1404円)

◆平和を伝える大切さ

著者の茅乃さんは、私たちの学校がある長崎市上野町に生まれた。原爆投下後、自らも重傷を負いながら他の被爆者の救護活動に当たった永井隆博士を父に持つ。原爆投下直後の悲惨な様子、永井博士の必死の救護活動、そして自身について記されている。原爆の悲惨さや平和を伝え続けなければならないと強く心に思った。 (中山瑞樹君・3年)

 

 

※価格はすべて税込み