東京都目黒区で5歳の女児、船戸結愛(ゆあ)ちゃんが虐待を受けて死亡、両親が保護責任者遺棄致死の罪で起訴された。児童相談所(児相)が虐待の恐れに気付きながら、悲劇を防げない事態が繰り返されている。

ノートに「ゆるして」

結愛ちゃんの体重は5歳児平均の約20キロを大幅に下回る12キロで、自宅からは「もうおねがいゆるして ゆるしてください おねがいします」などと書かれた大学ノートが見つかった。

警察などによると、一家は香川県から1月に目黒区に転居、両親は結愛ちゃんに十分な食事を与えず、暴行を加えるなどして衰弱させた上、虐待が発覚することを恐れて医師の診断を受けさせずに放置し、肺炎による敗血症で死亡させた疑い。3月2日、搬送先の病院で死亡が確認された。

通報と保護繰り返され…

香川県で一家が暮らしていたアパートからは何度も悲鳴が聞こえ、近隣住民が16年8月に児相に通報したが「虐待は確認されなかった」として児相は結愛ちゃんを保護しなかった。同年12月に今度は警察に通報があり、児相が保護。父親は「しつけのため」として反省の態度を示したが、その後も通報と保護が繰り返された。父親は傷害容疑で2回書類送検され、いずれも不起訴処分になっている。

転居先を管轄する東京の児相が今年2月に自宅を訪れたが、母親に「関わってほしくない」と言われ、結愛ちゃんとは会えなかったという。児相が「両親との信頼関係を優先」という姿勢で臨んでいる間に、事件が起きてしまった。

対応は年10万件超

児童虐待防止法は2000年に施行され、全国の児相による対応件数は15年度に初めて10万件を超え、児相に相談・通告できる全国共通ダイヤル「189」の運用も始まった。しかし、児相が虐待の恐れを把握していながら、警察が知らないまま子どもが死亡するケースは後を絶たない。

今回の事件では、児相間の引き継ぎに問題があったことが明らかになっており、人員拡充とともに、スキルの高い職員の育成が課題として指摘されている。