苔の美しい杉本寺を案内する片山海宥君(左)と、ツアー利用者のルイスさん

鎌倉学園高校(神奈川)のESS同好会は2014年から、鎌倉を訪れた外国人観光客を英語で案内する「KAMAKURA ENGLISH TOUR」を行っている。目的は、生きた英語力とコミュニケーション力を養うこと。おもてなしの心を込めてガイドできるよう、英語力を磨いている。 (文・写真 青木美帆)

20組以上をガイド

ゴールデンウイーク中、人でごった返す鎌倉の目抜き通り。高校生2人が外国人観光客を案内していた。「これは何だい?」「日本のお菓子です」。「写真を撮ってもいいかしら?」「もちろんですよ」。コミュニケーションを楽しみながら、ゆっくりと進んでいく。

4月29日、片山海宥君と梅沢亮穏君(ともに2年)は、ニュージーランド在住のルイス夫妻ら3人を案内するツアーを行った。2人は、すでに20組以上のガイド経験があるベテラン。海外旅行経験が豊富なルイスさんが「彼らは明らかにプロ」と太鼓判を押すほどだった。

ツアー参加者と生徒たち

サプライズに涙

3人と合流直後、訪問予定だった2つの寺に「すでに行った」と言われた。相談の末、夫妻が高齢ということを考慮して残りの寺社をゆっくり回ることに。昼食場所が混雑し、遅れて到着した寺は入場制限中……。再び予定を変更し、別の寺に案内した。「アクシデントが起きたときは優先順位を決めるんです。時間通りに終わることを第一に考えたら、次の行動は必然的に決まります」(片山君)

最後は道中に撮影したインスタント写真と折り紙の作品をプレゼントした。バスの中で2人がこっそりと書いた「See you again!」というメッセージを目にしたルイス夫人は思わず涙。「Lovely student, Keep on chasing your dreams(素敵な生徒さん、夢を追い続けてね)」と2人を抱きしめた。

ツアー終了間際、サプライズのプレゼントを手渡す梅沢君(左)と片山君(左から2番目)。2人がかぶっている帽子はルイス夫妻のニュージーランドみやげだ
ツアー終了時、熱い抱擁を交わした

英語での対話力養う

英語によるツアーを始めたのは4年前。当初は、部員が鎌倉駅前で外国人観光客をつかまえガイドを申し出る「声掛けツアー」のみ行っていたが、旅行会社の協力を得てウェブサイトで事前に外国人観光客がツアーを予約できるようになった。顧問の飯塚直輝先生が予約を受けると、生徒が直接ゲストとメールでやりとりしてプランを組む。

梅沢君は得意でない英語の学習意欲と自信を養うために入部。「自分から人に話し掛けることが得意でなかったけれど、だんだんできるようになってきました」と自身の成長を語る。片山君は英語で学年トップクラスの成績だが、当初はまったく会話ができなかった。猛特訓の末に夢や政治について語れるほどの力を身に付けた。

活動は2年生の学年末まで。梅沢君は「ジョークで笑わせられるツアー」、片山君は「号泣させるくらい感動的なツアー」という目標を実現させるべく、これからもおもてなしを続けるという。

【部活動データ】部員17人(2年生5人、1年生9人、中学生3 人)。月曜日は座学、土曜日は声掛けツアー、日曜日は予約が入ればイングリッシュツアーを実施。不定期で、外国人観光客に日本料理を教える「すし料理教室」も行っている。