嫌なことから逃避するために拒食や過食に走り、ひどくやせてしまう「神経性やせ症」。女性患者の多い病気だが、男性患者もおり、成長期にあたる高校生年代は特に注意が必要だ。日本摂食障害協会の理事を務める内科医の鈴木眞理先生(政策研究大学院大学教授)に実態を聞いた。(青木美帆)

骨のトラブルにつながる危険あり

 骨に含まれるカルシウム量は、ある時期にピークを迎え、そのピーク量を40歳まで維持した後に低下していきます。このピーク値をいかに高くしておくかが、老年期の骨粗鬆症や骨折の予防になります。女性が14~15歳で、男性は18歳ころまでにピークを迎えます。つまり、カルシウム量のピークが決まる高校生年代に神経性やせ症になると、三大栄養素、カルシウムやビタミンD不足、骨を作るホルモンや性ホルモンの低下で、骨量のピークは下がり、中年以降の骨粗鬆症の予備軍になります。

 高校生年代が摂食障害を引き起こすきっかけの大半が人間関係や進路の悩みなので、男女差はありません。ただ、女性の摂食障害患者さんは「やせたい」という言い方をしますが、男性の場合は「筋肉をつけたい」がとても多いですね。毎晩何10キロも走ったり、突然筋力トレーニングにハマったりする傾向がありますが、過剰な運動に対して十分な栄養をとらないという意味では女性と同じなので、結局やせていきます。男子高校生は女子よりも異常に気付きにくく、周囲も注意が必要です。

 
鈴木眞理先生
内科医。政策研究大学院大学教授。
日本摂食障害協会の理事を務める。