5カ月間、試行錯誤しながら技術を磨いてきた4人

常総学院高校(茨城)吹奏楽部の3年生4人がサックス四重奏に挑み、「全日本アンサンブルコンテスト高校の部」(3月、全日本吹奏楽連盟など主催)で金賞を受賞した。指揮者を立てず一人一人が異なるフレーズを奏でるアンサンブルは、演奏者自らの創意工夫が必要だ。時にはぶつかり合って涙したこともある。困難を乗り越え、絆を深めた日々を追った。 (文・写真 青木美帆)

自分たちで作る音楽

大人数の合奏にはない、アンサンブルならではの特徴とは何なのか。松岡紗菜さんは「人数が少ない分、全員がより本気でやらないと成り立たない」と話し、池田実鈴さんは「誰かに作ってもらうのではなく、自分たちで作る音楽」と言う。立花翼君、加藤伶奈さんを合わせた4人は、昨年10月から5カ月間、本気で自分たちと向き合い、音楽を追求した。

練習の中で擦れ違い

同学年のサックスパートは4人のみ。共に過ごす時間は多く、仲も悪いことはなかったという。しかし、4人で膝を突き合わせて長時間の練習に励んでいく中で、徐々に擦れ違いが生じてきてしまった。

昨年12月の県大会前に大きな亀裂が入った。メンバーで唯一、前年の合奏のレギュラー外だった池田さんは、自分の実力に自信が持てず、他の3人に引け目を感じていた。後ろ向きな言葉ばかりを発する池田さんに3人はいら立ち、池田さんは練習場を飛び出した。

自分たちの音楽を追求した4人の絆は固い

4人で話し合い結束

いつまでたっても戻ってこない池田さんを心配して、加藤さんが呼び戻しにやって来た。

「やっと4人で一緒にやれてうれしかったけど、自分だけ知らないことも多いし、できないことも多くて、どうしても自分は駄目だっていう気持ちから抜け出せない」「気にしなくていいって」「そんなに簡単に前向きになれない!」……。2人の口論はフロア中に響き渡るような激しいものになり、収拾がつかない状態に。時間を置き、あらためて4人で話し合うことで、ようやく全員の気持ちが結束した。

「あの出来事が全国大会に行くきっかけになったし、4人が4人らしくなって団結できるきっかけになった」。池田さんは当時を思い出し、涙ぐむ。

試行錯誤し技術高める

技術面でも互いが知恵を出し合い、試行錯誤しながら壁を乗り越えた。楽曲の中に現れるリズミカルな部分で息が合わないときは、椅子の周りを歩きながら演奏した。「誰もまともに吹けなかったけれど、体にリズムを取り込む感覚は養えたかな」と立花君。全国大会の前日練習では、ホールの音の響き具合を確認するために四隅に分かれて吹いたという。

「自分たちで演奏法を考えたり、たくさん話をしたり、とにかく楽しかったよね?」。加藤さんが活動期間を振り返ると、3人はほほ笑んでうなずいた。

【部活データ】1983年創部。部員118人(3年生43人、2年生24人、1年生51人)。平日の練習は午後4時から7時45分まで。県を代表する吹奏楽の名門で、中学生を対象とした講習会は2日間で約1800人を動員する。