東京大学の2018年度の入学式が4月12日、日本武道館で開かれた。学部の新1年生3132人に向けて五神真総長が式辞を述べた。

「変化の時代」右往左往しないために必要なこと

五神総長は、現在は「変化の時代」と言われることは「社会や思想が大きな転換期にあり、先が読めないこと、また、変化の速度が極めて速いため、その場の対応に追われてしまう」と指摘。「時代の流れに呑み込まれて右往左往していると、自分の立ち位置が自分自身にも見えなくなり、いつのまにか好ましくない事態にまきこまれてしまうでしょう」と警告した。

東京大学の五神真総長(2016年12月撮影)

そのうえで、哲学者プラトンの「目の前で変転する政治や社会の状況に振り回されているとめまいを起こしてしまう。だから、一旦距離を取って、本当に大切なことが何かを見極めなければならない。そこでは、現状から離れた視点が必要なのだ。その視点こそが哲学である」という言葉を引き、大学で取り組む学問は「自分が今どのような場所にいるのか、どちらに向かうのかを冷静に考えるための思考の基盤であり、時代の変転に流されないための視点を獲得すること」だと説いた。

変化は時代が与えた大きなチャンス

さらに「変化の波の真ん中に放り込まれると、不安あるいは無力感に襲われ、守りの姿勢に陥りがちです。しかし、変化は時代が皆さんに与えた大きなチャンスでもあります」と語り、「変化に合わせようと追われるのではなく、自分も変化を作り出す一人として能動的に立ち向かい、ぜひこの絶好のチャンスを積極的に捉え、大いに楽しんでもらいたい」と新入生を励ましていた。

式辞ではその後、変化の時代を楽しんだ先輩として、東京大が創設された1877年に文学部に入学した岡倉天心のエピソードを紹介した。