トランプ米大統領と金正恩・朝鮮労働党委員長の米朝首脳会談が実現する見通しとなった。実現すれば米朝首脳の会談は史上初めて。核・ミサイル問題をめぐり軍事衝突の危機も懸念された両国関係が急進展し、外交解決に向けて動きだす歴史的転換点となる可能性もある。

主導権狙う金氏

Qなぜ会談に合意した?

金氏が非核化への意思を表明し、核・ミサイル実験の凍結を約束。トランプ氏との早期会談を要請し、トランプ氏が応じた。

元日の「新年の辞」で「核のボタンが常に私の机上に置かれている」と米国を威嚇していた金氏が一転、米国に首脳会談を提案した。専門家は、制裁や軍事的圧力で窮地に追い
込まれる前に対話の主導権を握りたいという金氏の思惑を指摘する。また「外貨準備が尽きて破産寸前の状態で、経済危機が最大の動機」との見方もある。

一方のトランプ氏は、実務交渉や高官協議を飛ばし、一気に首脳会談に持ち込む〝トランプ流〟トップ外交で非核化に道筋をつけて、歴史に名を残し、今秋の中間選挙に臨みた
い思惑があるとされる。

主張に隔たり、難航も

Q本当に実現するの?

首脳会談は「5月までに実施」で合意したが、時期や場所などは決まっていない。米国はこれまで「北朝鮮の恒久的な非核化を目指し、その結果以外は受け入れられない」とし
ており、双方の主張には大きな隔たりがある。北朝鮮が核放棄の見返りとして体制保証だけでなく、制裁緩和や平和協定の締結などを求める可能性があり、交渉の難航が予想される。

さらに、トランプ氏は外交の司令塔だったティラーソン国務長官を解任、北朝鮮と非公式接触を重ねていたジョセフ・ユン特別代表も辞任した。首脳会談は、実務者レベルの事
前協議は不可欠だが、下準備を担う国務省の態勢が定まっていないなどの不安も多い。

韓国・北朝鮮も会談予定

Q日本はどうする?

米朝会談に先立って、韓国の文在寅大統領と金氏の南北首脳会談が4月27日に板門店で開かれる。2000年、07年に続いて11年ぶり3回目の首脳会談で、韓国は朝鮮半島の非核化問題を取り上げることに意欲を示しているが、議題は決まっていない。また金氏は中国を電撃訪問、冷え切っている中朝関係を改善し米朝会談で中国を味方につけたい思惑がある。一方、はしごを外された形の日本は、日朝首脳会談の可能性を探るため、北朝鮮側と接触している。

【memo/現在も「休戦」状態】 朝鮮半島は冷戦下で軍事境界線(38度線)を挟み、大韓民国(韓国)と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に分断された。朝鮮戦争(1950~53年)で米軍主導の国連軍と北朝鮮・中国軍が激戦を展開した後、休戦協定が結ばれた。現在も戦争終結ではなく「休戦」状態にあり、両国は依然対立関係にある。