世界的な大学ランキングとしては、英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」による「THE世界大学ランキング」や、英国のクアクアレリ・シモンズ(QS)社の「QS世界大学ランキング」、中国の上海交通大学による「世界大学学術ランキング」などが知られる。ランキングは、各国の学生が留学先の大学を選ぶ指針として利用されているとされることもあり、大学側も無視できない存在だ。

ランキングはどう決まるのか

ランキングはどう決まるのか。THEの世界ランキングの場合は、①教育力②研究力③研究の影響力④国際性⑤産業界からの収入―の5分野を設け、分野内で複数の指標がある。例えば「教育力」分野は、評判調査(世界の研究者へのアンケート)、教員数と学生数の比率、教員あたりの博士号授与数などだ。研究や博士課程教育を重視した指標といえる。半面、教養教育に力を入れるなど学部教育に特化する大学はランクインしにくい、日本語による論文が評価されにくい、といった限界もある。世界ランクに入っている日本の大学が、国内の学生にとってよい教育をしている大学であることとは必ずしも直結しない。

THE世界大学ランキングの算出方法

THE2018年版は世界1102大学がランクイン、日本は89大学

ランクインするには、大学がエントリーしてデータの提供などをすることが前提だ。THEはエントリー数を明らかにしていないが、2018年版にランクインしたのは1102大学。世界の高等教育機関の5%にあたる。日本からは89大学がランクインしており、これは米国、英国に次いで多い。ただ、100位以内に入ったのは東大、京大の2大学で、中国、韓国と同数だ。

THEは、世界大学ランキングが研究重視のため、教育を考慮するために「日本版」を考えたという。調査結果の分析にあたったダンカン・ロスさんは「日本の大学の力を世界に実証するべきだ」と語る。

適切な指標がない分野も 順位の根拠に注目を

THEの大学ランキングの分析にあたっているダンカン・ロス氏

とはいえ、ランキングはどの指標を採用するかで順位は左右される。あるテーマについて大学の力を測るのに適切な指標がない場合もある。「日本版」では、「教育充実度」と「教育成果」を測る指標が高校や企業、研究者のアンケート調査のみだ。ダンカン・ロスさんによれば、こうしたテーマに適したデータが存在しないためだ。「日本の大学は卒業率がほとんど同じ。米国には大学卒業後数年後の平均収入などのデータがあるが、英国にも日本にもそういうデータはない」という。

大学ごとの順位が学部ごとに多様な姿を正確に反映できているとも限らない。大学選びにランキングを参照するときは、順位の根拠となっている指標に注目することも大切だ。(西健太郎)