各教科のプロフェッショナルである先生方が効果的な勉強法について解説するこのコーナー。今回は、駿台予備学校の田部圭史郎先生に、日本史の勉強のコツを伝授してもらった。どんな視点で教科書を読めばよいのか、アドバイスをぜひ参考にしてほしい。 (構成・安永美穂)

今回のお悩み

 
日本史の流れがつかめなくて…
コツはありますか?
「構造の変化」を捉えることがカギ
 
 
 

田部圭史郎先生

駿台予備学校 日本史科講師

 

時代の「枠組み」理解を

日本史を勉強するときに意識してほしいのは、「流れ」ではなく、それぞれの時代の「枠組み」をつかむこと。例えば、平安時代なら「桓武天皇や嵯峨天皇が律令制の再編成を図る」→「藤原氏が台頭して摂関政治を行う」→「上皇や法皇による院政が行われる」→「平氏が政権を握る」といった大きな枠組みを、まずは理解してしまおう。

 枠組みを覚えておけば、一つ一つの出来事について学習したときに「なぜ起きたのか」「その後どうなったのか」といった前後の出来事とのつながりも把握しやすくなる。意外かもしれないけれど、まずは基本の枠組みを覚えることが、細かい部分を理解していくた
めの突破口になるんだ。

出来事のつながりが重要

教科書を読んで学習する際は「時代の構造がどのように変化していくのか」を意識してみよう。

 大まかに言ってしまえば、歴史を学習するということは「ある構造が存在する」→「その構造が壊れる」→「新たな構造が構築される」ことを理解するということ。

例えば、古代史を学習する際は律令体制というものが構造の基本だ。7世紀後半に律令体制が構築され、8世紀から9世紀にかけて展開・動揺し、10世紀に破綻していく。ヤマト時代から平安時代という長い期間でも、構造を中心に考えれば、こうまとめることができる。

 そこでお勧めなのは、教科書の目次を見てみること。目次には、それぞれの時代の構造を表すキーワードが書かれているので、それを順番に見ていけば、大まかな構造の変化が分かる。

教科書の本文を読むときは「太字ではない文章の部分」をしっかり読むことを心掛けよう。

例えば、太字になっている「院政」「荘園」「知行国」といったキーワードを覚えるだけではなく、そのキーワードをつなげて「平安時代後期には、天皇の父や祖父である上皇や法皇が政治を行う院政が始まった。経済基盤の一つとして、知行国・荘園があり、上皇の私的な側近である院近臣に荘園を与えたり、彼らを知行国の国守に任じた」というように、キーワードとキーワードの関係を自分の言葉で説明できるようにしておくことが大切だ。

授業の板書で、先生が矢印を使って説明することがあれば、その矢印の意味を自分で説明できるようにしておこう。

全体と細部を往復しよう

文化史については、まず文化の基本的特徴をおさえること。仏像や絵画、建築物などの写真を見て「好きか嫌いか」という自分の感想と結び付けて覚えるようにすると、思い出しやすくなる。漢字を正しく書くように心掛け、日頃から細かい部分まできちんと覚えることを意識してほしい。

 日本史の理解を深めるコツは、「全体像(時代の枠組み)」と「細部(用語など)」を何度も往復しながら勉強すること。授業の後は教科書をもう一度読み直し、その日に習ったことが、全体の枠組みの中でどこに位置づけられるのかを意識しながら復習する習慣を身につけよう。

 
 
【たなべ・けいしろう】
神奈川県出身。専攻は経済思想史。高校3年の時に受けた夏期講習がきっかけで、駿台予備学校の日本史科講師を志す。「理解を深める板書」と「記憶に残る話」を心掛け、日々熱い授業を展開中。模試や教材などの作成にも携わっている。趣味はドライブと旅行。