3月23日に開幕する第90回記念選抜高校野球大会に、慶応義塾(神奈川)が9年ぶり9回目の出場を決めた。強豪校が多い県大会で準優勝、関東大会では準決勝に進出し、ひのき舞台に立つ。プレーの根底にあるのは「考える野球」。たとえライバルであっても教え合い、技術を磨くために考え抜き、貪欲に強さを求めている。 (文・写真 茂野聡士)

 

ライバル同士で教え合う

100年以上の歴史を持つ同部は、「Enjoy Baseball」を掲げている。直訳すると「楽しんで野球をする」となるが、これは決して「楽をしてプレーしよう」というわけではない。エースの生井惇己(2年)は「『おちゃらけているのでは?』と聞こえるかもしれませんが、実際はそんなことは全くない」と胸を張って語る。「常に考えることが求められる厳しい練習の中に、楽しさがあると思っています」

例えば、生井と共にエース争いを繰り広げる渡部淳一(2年)は同じサウスポーだが、お互いの技術をよく教え合っているという。「自分よりも渡部の方が変化球の球種を豊富に持っています。だから『どうやってその変化球を投げるの?』と聞きますし、渡部には
僕の特徴であるインコースへの攻め方をアドバイスすることもあります」(生井)。互いが成長するためならライバルでも惜しまず、強さを求め、考え抜く姿勢を貫く。

学年関係なくチーム牽引

自発的な姿勢は上級生だけではない。例えば1年生キャッチャーの善波力だ。「試合中に良くない状態になると、善波から『もっと力強く投げて!』と励まされることもあります」(生井)と、学年に関係なく、勝利のためなら率先してチームを引っ張っていこうとする意識が強い。

キャプテンの下山悠介(2年)は「それぞれが考えてプレーすることで『エンジョイ』しながら、粘り強く戦っていきたいです。そういった野球をやって、見てくれる皆さんにうらやましいな、僕らのようなプレーをしてみたいなと思ってもらえるようになりたいで
す」と意気込んでいる。

センバツ出場が決まり喜ぶ部員たち(1月26日撮影、学校提供)
【TEAM DATA】
1892年創部。部員79人(2年生40人、1年生39人)。前身の慶應義塾普通部時代に第2回全国中等学校野球大会(現・夏の甲子園)で優勝。OBに白村明弘(日本ハム)、山本泰寛(巨人)といった現役プロ選手もいる。