第90回記念選抜高校野球大会に出場する滋賀3校の中で、21世紀枠として59年ぶりの春切符を手にした膳所(ぜぜ)は、全国でも珍しいデータ分析の専門部員を擁している。収集した相手打者のデータを独自のプログラムで分析し、打者一人一人の傾向を見て守備の配置に役立てるなど、最先端の野球を実践している。(文・写真 白井邦彦)

 

独自の記録シート考案

県内屈指の進学校である膳所が、学校創立120周年の節目に59年ぶりの春の甲子園切符を手にした。それを陰で支えたのが、高見遥香と野津風太(ともに1年)の2人によるデータ分析班だ。昨年4月に新設される前は、試合に出られない部員が何となくデータ収集を行ってきたが、「それではデータの蓄積も継続性もない。選手には野球をやらせたいのでデータの専門家をつくりたい」という上品充朗(うえしなみつお)監督の思いで始まった。

主にデータ収集を行う高見は「もともと広島カープのファンで野球の試合は見ていた。プレーはできないけれど、自分にも何か役立つことができるならやりたいと思った」と話す。グラウンドを約180分割した専用の記録シートを考案し、対戦チームの打者がどんな球種をどの方角へ打ち返したかを細かく記してきた。多いときは1打者で5試合分のデータを集める。地道な作業だが「『データ役立ったわ』と選手に言われるとうれしい」と、大きなやりがいを見いだしている。

分析通りで「すごさ実感」

手書きデータは独自の変換プログラムに入力される。そこで洗い出された相手打者の傾向は、事前にSNSなどで監督や選手に伝えられた上で、試合前日のミーティングでも紹介される。守備のポジショニングなどを練る参考にしてもらう。

主将の石川唯斗(2年)は「昨秋の県大会で、打たれた瞬間に『センターを破られた』と思ったら、そこに味方の選手が守っていたことがあった。データ分析のすごさを実感した」と効果を口にする。

既存ソフトをベースにデータ変換プログラムを構築した野津は「パソコンの作業に興味があって入った。野球のルールも分からなかったが、思った以上に頭を使うスポーツだと分かって好きになった。他校のみんなにもデータ分析の価値や面白さを伝えられるよう
に、これからも頑張りたい」と目を輝かせた。

 
【TEAM DATA】
1898年創部。部員28人(2年生17人、1年生9人、データ班2人)。甲子園には春3度、夏2度出場。昨秋の滋賀県大会は準々決勝で近江に1-3の惜敗。野球はもちろん全てのクラブ活動を「部」ではな「班」と呼ぶ。