プロジェクションマッピングを成功させた生徒ら。(学校提供)

静岡・掛川西高校2年生の有志20人は12月23日、掛川城でプロジェクションマッピングに挑戦した。城の壁などに四季折々の花や掛川城にまつわる武将の切り絵などの映像をストーリー仕立てにして投影し、1000人以上の来場者を魅了した。

映像・音楽全てオリジナル

校内でICT(情報通信技術)機器の整備を担当していた生徒たちは、昨年8月にiPadを使ったプロジェクションマッピングの講習を受けた。「地域貢献のために取り組みたい」と声が上がり、実行委員会をつくり、約2カ月かけて準備してきた。

映像もBGMも生徒オリジナル。テーマを「和」に決め、アプリを使って作曲した。広報活動にもこだわり、独自のウェブサイトを作成し、ツイッターなどSNSでも活動を発信。駅周辺でチラシも配った。

松永明子さんと鈴木舞さんは「iPadやスマートフォンで映像やBGMを作れるし、プロジェクターがあれば映写できる。誰でもできる活動だと高校生に知ってもらいたい」と話した。

本番の様子(学校提供)
季節の花々の映像が美しく彩る
武将のイラストを投影
 

Q&A 松永さんと鈴木さんに製作秘話を聞きました

共同作業できるアプリを有効活用

――いつ作ったんですか?

週3~4日、12月に入ってからは毎日活動しました。といっても、ICTを使って各自のペースでそれぞれが選んだ場所で作業や会議をしました。

――集まらなくて活動できるってどういうこと?

オンライン上で共同作業ができる「スクールタクト」いうアプリを使ったんです。都合がよい時間と場所で作業ができるので、効率的に進められました。プロジェクションマッピングの内容もこのアプリで案を出し合って「地域活性化と掛川の人たちが親しみやすいものは何か」を考えました。

――テーマはどうやって決めていったの?

テーマ決め、大変でした……。委員の生徒はプロジェクションマッピングをだれもやったことがありません。実現するためには何から始めていいか、慣れない作業に戸惑うことも多かったです。「どうすれば地域をはじめとする観客に楽しんでもらえるか」「プロジェクションマッピングで何を表現するか」「どうしたらきれいに映し出せるのか」などを考え、慎重にテーマを設定しました。

画面で見る画像と、実際に投影される画像では、色や印象が全く異なるため、メンバーで活発に意見を出し合いながらよりよいものを作ろうと努力しました。周囲の協力から徐々に形になり、自分たちが「やりたい」と思ったものを形に出来たと思います。

ICT機器を上手に活用

SNSとチラシ デジタルとアナログ両方で広報

――どんなところにこだわったの?

「自分たちの手で作りあげる」ことです。切り絵のシーンは、実行委員の中で得意な人が絵コンテを書いてストーリーを作り、絵を描き、スマホやiPadで取り込んで作成しました。

――大きな城に映像を映すプロジェクターはどう用意したの?

高額なため、用意が難しかったのですが、企業が無償でレンタルしてくれました。このプロジェクターはとても重く、支える足場が必要になったのですが、保護者が手作りしてくれて、とても感謝しています!

――広報活動を熱心に行ったそうですね。

デジタルな手段(ウェブサイトやTwitter、Instagram、Facebook といったSNS)とチラシの手配りで気持ちを伝えました。SNSはいま、風潮は「高校生にとっては悪だ」という評価があるように思いますが、これからはSNSやICT機器の有効活用が必要です。そのため正しくSNSやICT機器を活用することにこだわりました。大人の方々のアドバイスを受けながら運営した結果、トラブルなく大きな成果を上げられました。

――チラシ配布も行ったんですね。

はい。掛川駅周辺と学校周辺にチラシを手渡しで配布しました。協力してくださった方々や同窓会長などに自筆の招待葉書を送りました。

制作に熱中する生徒たち

大阪に住む専門家とビデオ会議

――ICT機器、使うのは難しそうです。

センセイワークという社団法人の支援を受けました。みなさん大阪在住なので、ZOOMというアプリを使ったビデオ会議を積極的に行いました。先ほどお話したスクールタクトというアプリを使って協同作業を行ったり、Zoomを使って帰宅後に大阪と実行委員のリーダーでミーティングを行ったりもしました。

またslackというアプリで、広報、制作、企画、運営など連絡や報告を共有するようにしました。それぞれの実行委員が忙しく毎日集まることが難しかったが、各自のペースと各自の場所で、作業やミーティングを行うことができた。

絵コンテ

 ステンドグラスの美術館でも光の演出

――同じ日に光の演出を行ったと聞きました。

掛川城の同じ敷地内のステンドグラス美術館でも光の演出をやることになりました。間に合うか焦りましたが地域の期待を裏切るわけにはいかないので、なんとか頑張って間に合わせました。

――ステンドグラス美術館での演出や掛川城でのプロジェクションマッピングは、地域貢献の活動でもあるということですが。

はい。地域の方々が協力的であり、市役所、商工会議所、掛川城の管理事務所、街づくり会社(地域おこしの第三セクター)などが親身になってくれて大変心強く、ありがたかったです。その反面、期待がプレッシャーとなり、本当に期待に応えられるのか不安でした。

敷地内にあるステンドグラス美術館のライトアップも行った
 

1000人以上が来場 盛り上がりに感動

――本番はどうでした?

予想以上に多くの方々が来てとてもうれしかったです。掛川城の本丸広場はとても狭いのですが、1000人以上の来場者がありました。またステンドグラス美術館は、夜だけで開館以来最高の200人以上の来場者があったそうです。注目してくださっていることが分かり、とても達成感があり、今までの苦労が報われたように感じました。

掛川城に投影された映像も、天候にも恵まれきれいに映りました。映像の動きで、大きな歓声があがり、私たち作り手と観客が一体となったような気がしました。

――本番翌日も活動したそうですね。

掛川城と駅までの間の清掃を行いました。清掃と同時にお世話になった方々へお礼のあいさつも行った。ごみ拾いの途中に「西高のマッピングの人たち?」と声をかけてくださる方がいて、とてもうれしかったです。

会議を重ねて完成度を高めた

3月にダンス部とコラボ予定

――今後の予定を教えてください。

3月に行われるダンス部の定期公演で、ダンスとプロジェクションマッピングのコラボをします。今回の経験を活かして、実行委員会以外の高校生と一つの作品を作ることを楽しんでいきたい。この活動を後輩に継承したいです。またさまざまな行事や部活動にも波及していって、いろいろなところでプロジェクションマッピングに挑戦する高校生が増えればうれしいです。

翌日は掛川城周辺を清掃した