【2020年1月17日・最新情報を追加しました】大学入試センター試験が、2020年1月(2019年度)の実施を最後に廃止され、2020年度(21年1月に実施)から新テスト「大学入学共通テスト」に移行する。文部科学省は国語と数学に記述式問題を導入し、英語民間試験の成績を入試に利用する新たな仕組みを設ける予定だったが、制度の不備から共に取りやめた。結局、何が変わるのか。ポイントをQ&A形式でまとめた。

Q なぜセンター試験が廃止されるの?

A 1990年に始まったセンター試験は、マークシート式でありながら、「暗記だけでは解けない、考えさせる設問がある」と高校の先生の間での評価が高かった。だが、国は「先行きが予想しづらいこれからの社会では、知識の量だけでなく、自ら問題を発見し、答えや新しい価値を生み出す力が重要になる」という考えから、思考力や判断力、表現力をより重視した新しいテストに衣替えする方針を決めた。

大学入試センターは、2017年度と18年度に本番に備えた試行調査(プレテスト)を実施して高校生に受けてもらい、その結果も踏まえて19年6月に問題作成方針を公表した。現在は、本番の問題作成に入っている。

Q 何が変わるの?

A 文科省のもともとの方針では、20年度からは、マークシート式(選択式)に加え、国語と数学の一部に記述式の試験を導入するはずだった。英語はマーク式のテストも当面残しつつ、20年度から民間の検定試験を国が認定し、成績を入試に使う新たな仕組みを始める計画だった。しかし、ともに制度への不備や不安が多く指摘され、文科省は20年度からの実施を取りやめた。

 

もともとの方針では、国語は、マークシート式とは別の大問を設け、80~120文字程度を書かせる問題を含め小問3問を出題するはずだった。記述式は論理的な文章(評論文)か実用的な文章のどちらか、またはこれかを組み合わせた文章から出題される予定だった(マーク式は古文・漢文も含めて出題)。文科省は、「大学や社会生活で必要な問題発見・解決能力を評価することが重要」としていた。試験時間は20分延ばす方針だったが、記述式の取りやめに伴い、試験時間や大問数の扱いは未定だ。

一方、数学は、「数学Ⅰ」の範囲で小問3問が出題され、試験時間は10分延びるはずだった。現行のセンター試験の数学では、問題を解くための構想から結論までの過程が問題文中にある程度示されているが、記述式を入れることで問題解決の構想力を問いたい狙いがあるとしていた。しかし、こちらも取りやめになった。試験時間の扱いは未定だ。

Q なぜ取りやめに?

A 文科省が新テストの方針を示して以来、課題は多く指摘されていた。記述式問題の採点作業は大学入試センターが民間企業に委託する。50万人以上が志願する共通テストで、公平に採点できるのか不安視する声は大学・高校の双方にあった。記述式は採点に時間がかかるため、1月に実施するマークシート式の試験と試験日を分けて、数カ月早めることも検討されたが、高校側から前倒しに反対する声が強く、試験日は現行と同じく、1月中旬となった経緯がある。

Q 試験実施が早まるのは高校生には困るね。

A 高校の先生は「学校の行事や授業への影響が大きい」と心配する人が多かった。時期については、年に何度か共通テストを実施し、受験生が受ける時期を選べるようにすることも検討されていたが、技術的な課題が多く、実施は先送りになった。高校や大学の先生などが入った新テストの検討会議では、実現したい理想と現実的な課題のせめぎあいの連続だった。

 

文部科学省の「高大接続システム改革会議」。左から2人目が安西祐一郎座長(2016年3月撮影)

Q 英語の資格・検定試験はどう利用するはずだった?

A 文科省は、受験生に高校3年の4~12月に英検やGTECなど民間の資格・検定の中から国が認定した試験を受けてもらう考えだった。センター試験で測ってきた「読む」「聴く」に加え、「話す」「書く」を含む「4技能」を評価するためだという。録音機器を使って共通テストでスピーキングなどの試験を実施することも検討したが、約50万人が受験する試験での実施は不可能と判断したようだ。しかし、実施が迫った2019年11月に入り、政府は一転して20年度からの実施を延期することを決めた。制度に対して高校や受験生から不安が多く寄せられ、文科省側も不安解消のための対応を十分できなかったためだ。

Q 共通テストでの英語はどうなるの?

A 20年度以降も共通テストでの英語の出題は存続する。もともと文科省は共通テストでの英語は廃止し、民間の認定試験に一本化したい考えをにじませていたが、現在は民間試験を入試に使う仕組みを再構築するかどうかも含めてあらためて検討する会議を始めたところだ。

Q 結局何か変わるの?

A マークシート式の問題は、出題の方法を工夫して、より「思考力・判断力」が必要なテストになるという。日常生活や社会とのかかわりを重視した問題や、いくつかの文章や資料をあわせて読んで考える問題などが検討されている。試行調査では、探究学習や実験を題材にした問題が多くみられた。2022年度からは高校の科目の区分も大きく変える。24年度からは新テストの出題科目も内容もさらに変わりそうだが、記述式や英語民間試験の取りやめにともない、その行方は見通せない。

2017年11月には大学入学共通テストの試行調査が全国の高校・中等教育学校1889校で行われた

Q 個別試験はどうなるの?

A 一部の大学の入試は、解答に必要な知識が細かすぎたり、解法パターンを覚えれば解ける問題だったりして、高校生に暗記中心の勉強をさせてしまっていると批判されている。文科省は各大学に、思考力や表現力をより必要とする長文の記述式や小論文、面接や討論など、試験の方法を多様化し、教科学習に限らず、高校時代の経験を参考にする選抜を増やしてほしい考えだ。その方針を先取りするような改革は既に進んでおり、16年度から東大が推薦入試を、京大が推薦・AO入試を始めた。