風邪やインフルエンザ予防のために手をアルコール消毒する人もいるだろう。しかし、石鹸とアルコール消毒ではどちらの方が殺菌できるのだろうか。手を洗うとき、石鹸で手を洗ったらアルコール消毒はいらない? それとも両方必要? 牧野記念病院(横浜市)の内科医・建部雄氏さんに教えてもらった。

 

アルコール消毒はインフルエンザには有効

手指消毒用のエタノール(アルコール)を手に揉み混むと、インフルエンザウイルスなどの脂溶性の殻(エンベローブ)を持つウイルスに馴染んで破壊していきます。また、殻が壊れたウイルスは本体のタンパク質も変性しやすくなり、感染力が低下します。この仕組みが抗ウイルス作用につながります。

石鹸での手洗いとアルコール消毒の二段構えで

しかしながら、冬の時期の嘔吐や下痢で有名なノロウイルスやロタウイルスなど、この脂溶性の殻を持たないウイルスも存在します。風邪症状を引き起こすことで有名なアデノウイルスやライノウイルスなども脂溶性の殻を持たないため、手指消毒用のアルコールの消毒効果が事実上、ありません(かなりの長時間、手指消毒用のアルコールを作用させると全てのウイルスを失活させることはできますが、現実的ではありません)。

手にはどんなウイルスやその他の病原微生物が付着しているか分かりません。皮膚にダメージを与えないぎりぎりの範囲で、物理的に石鹸による手洗いで除去、その後、手指消毒用のアルコールで脂溶性の殻を持つウイルスをさらに不活化させる、という二段構えが衛生上、望ましいということになります。

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建部雄氏さん  たてべ・たけし 京都市生まれ。2001年、昭和大学医学部卒業。大規模総合病院の救急科で経験を積み、急性期病院・クリニックの勤務を経て現職。