受験シーズン直前。風邪やインフルエンザが流行しているが、そもそもどう予防すればよいのか。牧野記念病院(横浜市)の内科医・建部雄氏さんに、風邪やインフルエンザの感染経路や、正しい手洗いの方法などを聞いた。

触った物を介しても感染する

――そもそも、風邪やインフルエンザには、いつ感染してしまうのでしょうか。

医学的には、皆さんがよく知っている感染パターン2種類と、あまり知られていない1種類、合わせて3種類が知られています。

一つ目は「飛沫感染」です。

感染した人が咳やくしゃみをすることで排泄する、ウイルスを含む飛沫(0.005ミリ以上の水滴)が飛散し、これを健康な人が鼻や口から吸い込むことで、ウイルスを含んだ飛沫が粘膜に接触して感染する経路です。

二つ目は「接触感染」です。

皮膚と粘膜・創の直接的な接触、あるいは中間物を介する間接的な接触による感染経路です。例えば、ウイルスで汚染された手指で他の人の傷に直接触れてしまうとか、食器や電灯のスイッチやTVリモコンを触ってしまうとこれを介して 他の人の手指にもウイルスが付着して、最終的に日常生活の動作の中で口や鼻からウイルスが侵入・感染するというものです。よく電車の吊革に「消毒済」とか「抗菌加工」といった表示がありますが、接触感染を不完全ながらも防いでいるというわけです。

乾燥・換気・低温環境に注意

――物を介して感染することもあるのですね。

そうですね。3つ目は「空気感染(飛沫核感染)」です。

感染した人と同じ室内にいる人が、空気を介して感染するものです。         飛沫感染のように直接分泌物を吸い込むのではなく、インフルエンザウイルスが感染力を長時間保ちやすい環境であれば、空気を介して他の人に感染してしまうとされています。

なお、インフルエンザウイルスが比較的、長時間感染力を保ちやすい環境とは、「換気をしていない小さな部屋」「室温が低い」「空気が乾燥している」といったことが主に挙げられます。

北極や南極などの寒すぎる環境だとインフルエンザや風邪にならないようです。

帰宅後はもちろん、感染者が自宅にいればこまめに

 

――3種類の感染経路を踏まえて考えると、手洗いのタイミングはいつするべきでしょうか?

まずは、インフルエンザまたは風邪の症状の人、またはその疑いが強い人と接触した後。冬の時期にご家族に発症した方、その感染の疑いのある人がいる場合はこまめに石鹸等での手洗いが必要です。

また、外出から帰宅した際などは、手にインフルエンザウイルスや風邪の原因となる他のウイルス等も付着している可能性が濃厚です。外出から帰宅した際などの石鹸等での手洗いは重要です。

皮膚が敏感な人は、たびたび石鹸等での手を洗うことによって手や指の潤いを保つのに必要な皮脂まで洗い流してしまい、手荒れを起こすことが少なくありません。めんどうでもベビーローションなどの保湿剤を手洗い後に使用されることをお勧めします。

適切な室温、適切な湿度を保とう

――「空気感染」を防ぐためには、環境を整えることも必要ですか?

はい。一般的に、冬に流行する風邪症状の原因ウイルスやインフルエンザウイルスは低 温乾燥の条件を好みます。空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能が低下し、風邪やインフルエンザのウイルスにかかりやすくなります。

特に乾燥しやすい冬の時期の室内等では、加湿器などを使って適切な湿度=50~60%を保つことも予防の上で効果的です。室温については20~25℃を保つとよいとされています。また換気については日中、1~2時間おき程度が理想的とされています

ちなみに省エネは理解できるのですが、寒い冬の時期に暖房も加湿器も一切付けずに就寝するのは感染リスクを高めてしまうのでお勧めはできません。

――人混みを避けたほうがよいと聞きますが、高校生活では電車や教室など、どうしても 人混みに出なければなりません……。気を付ける点はありますか?

まずは、暑すぎず寒すぎずの服装の上で、正しく使い捨ての不織布マスクを装着し外出すること。帰宅時は必ず石鹸で手洗いと、うがいは水がぬるま湯ですること。使ったマスクは交換することが基本です。

建部雄氏さん  たてべ・たけし 京都市生まれ。2001年、昭和大学医学部卒業。大規模総合病院の救急科で経験を積み、急性期病院・クリニックの勤務を経て現職。