高い技術と高品質を誇り、自動車と並ぶ日本の〝お家芸〟とされた家電産業の衰退が止まらない。昨年、シャープが台湾の鴻海精密工業の傘下に入り、今度は東芝が深刻な経営危機に陥っている。

15年に利益水増しが発覚

東芝は、インフラや半導体、パソコンなどの事業で損失の計上を先送りし利益の水増しをしていた不正会計問題が2015年に発覚、16年3月期の純損益が過去最悪の赤字になるなど一気に経営が悪化。医療関連の優良子会社や白物家電(冷蔵庫や洗濯機など)事業を売却し、同年9月中間連結決算はいったん黒字に回復した。

米原発子会社で巨額損失

しかし、追い打ちをかけるように、15年12月に買収したばかりの米国の原発建設子会社で巨額の損失を計上する見通しとなった。これを受けて今年2月に予定していた16年4〜12月期決算の発表を2回延期した末に、監査法人の「承認なし」のまま発表した。3回目の発表延期を回避するための〝禁じ手〟だが、これは決算の信頼性を著しく損なうものだ。

赤字1兆円? 穴埋めは…

米国の原発事業の損失額は明らかではないが、数千億円とも1兆円ともいわれている。17年3月期連結決算の純損益は過去最悪の1兆100億円の赤字が見込まれる。

巨額損失を穴埋めするため、半導体の主力製品でスマートフォンの記憶媒体に使われる「フラッシュメモリー」を手掛ける東芝メモリを分社化し、株式の大半を売却して1兆円超の資金調達を計画。米国企業や韓国企業のほか、シャープを買収した鴻海も出資を検討しているとされる。ただ、政府は競争力のある半導体技術が海外に流出することを警戒しており、決定には時間がかかる可能性もある。

東芝はさらに、社会インフラやエネルギーなど主要事業も新会社に分社化する方針、抜本的な組織再編が避けられない状況だ。