安倍晋三首相は9月28日召集の臨時国会冒頭に衆院を解散した。「子育てや介護、現役世代が直面する不安解消に政策資源を投入する」と述べ、消費税率10%への引き上げに伴う税収の使い道を変更し、幼児教育の無償化などに2兆円を振り向ける方針の信を問うと説明した。

 

幼児教育無償化、大学生の奨学金拡大

具体的には、2020年度までに3~5歳児の幼稚園・保育所の家計負担をすべて無償とし、0~2歳も低所得世帯に絞って無償化する。また、低所得世帯の大学生を対象に17年度から一部導入した給付型奨学金の支給額を大幅に増やすことや、授業料減免の拡充を表明。待機児童の解消に向け、32万人分の保育の受け皿を整備する計画を前倒しし、20年度末までに完了する方針も打ち出した。

19年に10%に引き上げ 増収分を振り分け

消費税率は現行の8%から19年10月に10%に引き上げる予定で、年5兆8千億円程度の増収が見込まれ、このうち4兆円を借金抑制に充てる計画としていた。安倍首相は税収の使途を借金抑制から目玉政策に掲げる教育無償化に振り分ける方針だが、使途変更は従来方針を逸脱するもので、返済できない借金が積み増し、将来に〝ツケ〟を回すことになる。

国の借金抑制は遅れ 財政悪化避けられず

10年度以降、歴代政権は税収などで政策経費をどれだけ賄えるかを示す「基礎的財政収支(プライマリーバランス)」を20年度に黒字化することを国際公約としていた。しかし、使途を変更すれば財政悪化は避けられず、財政健全化目標の先送りは必至だ。

「10月10日公示、22日投票」、となる衆院選では、消費税の使途のほか、憲法改正問題や対北朝鮮政策なども争点になる。一方、野党は国会審議を避けた冒頭解散を森友、加計学園問題を隠蔽(いんぺい)するための解散権の乱用であり「大義なき解散だ」などと批判している。