12月の首脳会談後に記者会見に臨んだ安倍首相とプーチン大統領(首相官邸のウェブサイトから)

12月に訪日したロシアのプーチン大統領と安倍晋三首相の首脳会談では、北方領土問題の進展が期待されたが、大きな前進はなかった。両首脳の会談は昨年だけで4回、これまでに16回も行われているが、なぜこの問題は難航しているのか。

四島の認識に日ロで大きな溝

 Q  北方領土問題とは?

 ロシアが占拠している択捉(えとろふ)島、国後(くなしり)島、色丹(しこたん)島、歯舞(はぼまい)群島の返還を日本が求めている問題。1945年8〜9月、当時のソ連軍侵攻が発端。日ソ両政府は56年の共同宣言に平和条約締結後に色丹と歯舞を引き渡すことを盛り込んだが実現していない。2013年4月の安倍・プーチン会談で、双方が受け入れ可能な解決策を目指す方針で一致していた。

 Q  今回の首脳会談の結果は?

 両首脳は北方四島での「共同経済活動」の実現に向けた協議を開始することで合意した。領土返還を目指す日本側は成果を強調したが、ロシア側は「領土主権については話し合われなかった」と指摘。会談を通じて、プーチン大統領から「返還」という言葉が出ることはなく、問題の根幹である四島の帰属先を確認する領土交渉は事実上、棚上げされた形だ。

 

Q  なぜ領土交渉が進まない?

 北方四島については、「固有の領土」とする日本と、「第2次大戦の結果、正当な領土となった」とするロシアの間には決定的な溝がある。安倍首相はロシアへの経済協力をテコに問題打開を図ろうとしたが、この溝を埋めることはできなかった。

 Q  今後はどうなる?

 日本側が〝成果〟として強調する共同経済活動だが、ロシアが実効支配している四島でどのような「経済活動」ができるかは微妙だ。ロシア側は自国の法律適用を強調しており、これを認めれば日本が主張する「主権」の放棄につながりかねない。

 首脳会談では、領土をめぐる認識の違いに加えて、米国主導のミサイル防衛(MD)構想をにらんだ安全保障問題も障害となった。厳しい現状を前に、安倍首相にはプーチン大統領から譲歩を引き出す余地はなかったといえそうだ。

 

(高校生新聞 2017年1・2月合併号から)