横浜サイエンスフロンティア高校(神奈川)はSGH(スーパーグローバルハイスクール)とSSHの両方の指定を受ける。中野裕夏さん(3年)はSGHの課題研究として、日本の伝統技術を継承する方法を探る。研究には、実験など科学の手法を取り入れている。

中でも和紙は、2014年に世界無形文化遺産に指定され注目が高まったが、職人の減少や高齢化が課題になっている。「和紙の魅力と職人を取り巻く問題を周囲に知らせたい」。中野さんはそんな思いから、「技術の継承方法」がカギと考え、研究を始めた。

優れた吸水力の秘密探る

 

「伝統技術を継承する方法」を研究する中野裕夏さん

まず、文献やインターネットで集めた情報で和紙への理解を深めた。続いて昨夏、和紙の特性である吸水力を検証しようと、実験に取り組んだ。ルーズリーフやキッチンペーパーなど、5種類の紙と和紙を水に浸して吸水力の違いを比較した結果、和紙が最も吸水力が高いと分かった。

さらに、電子顕微鏡でそれぞれの紙の表面を観察し、吸水力の秘密を探った。「和紙はほかの紙よりも繊維が長く、繊維同士の密度が低い」ことが理由と分かった。

その後、後継者不足の背景を探る研究にも取り組み始めた。和紙や原料の生産量、職人数の推移などを調べ、「生活様式の変化や、生産が機械化したことなどが原因」と中野さんは見ている。

今は、後継者を育てる仕組みを考えている。7月には学校代表の一人として、シンガポールで開かれる中高生の国際アイデアコンテスト「グローバルリンク」に参加し、研究成果を発表する。(堤紘子)