米国のトランプ大統領は190カ国以上が合意した地球温暖化防止の国際的な枠組み「パリ協定」から離脱すると発表した。中国に次ぐ世界2位の温室効果ガス排出国である米国の離脱は、温暖化対策に大きな打撃となる。

 

 

Qパリ協定とは?

地球温暖化の深刻な被害を避けるため2015年に採択された。温室効果ガスの排出量を今世紀後半に実質的にゼロにし、産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑えることを目指す。中国や米国など大排出国から最貧国まで、全加盟国が温暖化による被害を防ぐ行動を取る、と約束した点で「歴史的」とされる。

 

 

Q米国はなぜ離脱?

離脱の理由として、通商問題などで対立する中国などを念頭に「他国に利益をもたらし、米国の労働者に不利益を強いる」と、経済への悪影響を強調した。政権内に離脱への慎重論もあったが、ロシア疑惑で支持率が低迷する中、パリ協定からの離脱は大統領選の公約を手っ取り早く形にして求心力回復を期待できる切り札だった。

支持層の引き締めを図って政権基盤を安定させ、大幅減税や医療保険制度改革(オバマケア)代替法案の成立に道筋をつけたい狙いもある。しかし、国際社会の強い反発は今後の米外交の大きな足かせになると見られ、国内でも支持率上昇につながるかは微妙だ。

 

 

Q米国内外の反応は?

トランプ氏はパリ協定の再交渉の可能性を示唆しているが、ドイツ、フランス、イタリアの3カ国政府は再交渉を拒否した。

欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長は「われわれの戦いに逆行し、世界が期待するものと正反対だ」と強く批判。欧州各国や中国、ロシアなども「失望」「強い遺憾の意」を表明した。パリ市庁舎は抗議のため緑色にライトアップ、米ホワイトハウス前やロンドンの米国大使館前など世界各国で抗議デモが行われ、「アメリカ第一」を掲げるトランプ氏の孤立が鮮明になった。

 

Q今後どうなる?

批准国は発効から3年間離脱を通告ができないなどの規定があり、米国の離脱は早くて20年11月になる。国際社会は既にパリ協定が掲げる「脱炭素社会」の実現に向けて歩み始めている。各国は米国を説得する試みを続けているが、打開のめどはなく、「米国抜き」にかじを切りつつある。

米政府は温暖化関連の研究費を大幅削減する方針で、温暖化研究の縮小などさまざまな影響が生じる。各国は米国に翻意を働き掛けるとともに、協定を尊重し、積極的かつ有効な温暖化対策に取り組む姿勢を明確にしなければならない。