質問  自衛隊PKO参加 危険は?

南スーダンの情勢が悪化しています。日本から自衛隊が派遣されていますが、戦争を放棄している日本としては闘争に巻き込まれた場合、戦わずに逃れることができるのでしょうか。(高校3年女子)

■回答 「停戦合意」など5原則設け派遣

南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣されている自衛隊部隊が、韓国軍部隊に小銃の弾薬を1万発提供して大きな話題になりました。

PKOとは、国連が「国際の平和および安全を維持する」ために、各国が国連の要請に基づき自発的に提供した小規模の軍隊を派遣して、停戦監視をはじめとする多様な任務をこなすことを言います。派遣された軍人は、平和維持軍であることを示すために、ブルーのベレー帽やヘルメットを着用します。また、車両には白い塗装が施され、UN(国際連合)と大きく書かれています。

日本の自衛隊がPKOに参加するようになったのは、それほど昔のことではありません。「軍隊」を国外に送り出すことに日本国民の間で抵抗があり、またアジア諸国にも「軍国主義の復活に道を開くもの」とする見方がありました。国連の名の下に自衛隊を派遣する法律ができたのは1992年のことでした。

PKOに参加するための5原則があります。紛争当事者の間で停戦合意が成立していること。紛争当事者が日本の参加に合意していること。中立的立場を維持すること。このような条件が満たされないときは撤収できること。そして武器の使用は必要最小限にとどめること。派遣するときに「戦闘地域かどうか」が国会で議論されることがありますが、これはこうした原則に合っているかどうかという議論です。

海外派兵に慎重だった日本とドイツ

日本は、海外への自衛隊派遣に非常に慎重だったわけですが、第2次世界大戦で敗戦国だったドイツも軍隊の海外派遣にはやはり慎重でした。北大西洋条約機構(NATO)軍の一員として海外に派遣することをドイツ憲法裁判所が認めたのは94年のことです。日本と同様に、91年の湾岸戦争で多国籍軍に人的貢献をしなかったことを批判されたのがきっかけでした。

これまで自衛隊は、PKOに参加して「交戦」したことはありません。しかし、もし他の国の部隊が攻撃を受けて(あるいは民間人が危機的状況になって)、自衛隊が援助を要請されたとき、現在の5原則で本当にいいのかどうか、議論されることになるでしょう。

?考えてみよう?  日本が世界平和のために貢献するのは大事なことです。しかし経済的な援助や、限定的な自衛隊の派遣だけで十分でしょうか。将来的には、どのような役割を果たすことが必要だと思いますか

ふじた・まさよし
1948年生まれ。東京大学卒業後、「週刊東洋経済」記者・編集者を経て「ニューズウイーク日本版」創刊プロジェクトに参加。同誌編集長、編集主幹。現在はフリージャーナリストとして活躍中。