昨年4 月に創部した京都両洋(京都)女子硬式野球部。部の歴史に名を残すであろう初代主将に選ばれた越野志都瑠(2年)=愛知・塩津中出身=は、悩みながらも自分らしく部をまとめている。 ( 文・写真 木和田志乃)

創部当初は、部員が日替わりで主将を務めた。一巡したところで石井宏監督(49)から、初代主将に任命された。理由は「部員と同じ目線に立ってまとめていける」からだ。

同校に入学したのは、女子硬式野球部に入るため。1期生として自分たちで部の伝統をつくっていける点に魅力を感じた。小学校や中学校で学級代表や生徒会役員の経験もあり、「みんなで楽しもうという明るい雰囲気だし、支えてもらいながら主将を務められるのではないか。よし、やってみよう」と引き受けた。

主将になってからは、副主将の矢倉那美(2年)=大阪・喜連中出身=らと相談しながら、練習中の掛け声などを一つ一つ考えた。守備の要である捕手として、練習中から全力でプレーしている。

部員56人中、越野も含めた37人が寮で暮らす。「主将が崩れるとみんなが崩れる」(越野)ため、寮では生活態度から道具の手入れ、勉強に至るまで、常に他の部員の見本になるよう意識する。学校では、部の代表として礼儀にも気を使う。

だが、常に気を張る主将を見て、保育園からの幼なじみで投手の金か な田だ 夏実=愛知・塩津中出身=は少し心配していた。「昔から人をまとめるのは上手だけど、悩みを抱え込むところがある」ためだ。

金田の予感は的中した。昨夏の全国大会が終わってしばらくたったころ、練習時の私語や、部の規則を守らない部員が目立ち始めた。主将として注意すべき場面だったが、できなかった。いざこざが起こり、その部員たちが野球に打ち込めなくなることを心配したのだ。折を見て、優しく話してみたこともあったが、案の定、反発を受けた。一人で悩みを抱え込み、矢倉の前で涙を流すこともあった。

ある時、上田玲コーチから「チームの上に立つ人間が弱気では、誰もついてこない」と諭された。反発する部員に「変わってほしい」と粘り強く伝え続けること3カ月。気持ちがようやく伝わった。初めての苦難だったが、矢倉や上田コーチらの支えもあり、ようやく部が一つになったと感じることができた。「今は自信を持ってチームを引っ張っていける」と力強く話す。

しっかり者だが、ひもに引っかかってよく転ぶ「天然キャラ」の一面もある。練習中に派手に転ぶと、周囲にいた部員たちから一斉に笑いが起きる。一緒になって笑った後は、しっかりと心を入れ替え、部員たちにこう告げる。「切り替えよう、さあ行こう」

部の目標は全国制覇だ。初代主将としての誇りを胸に、自分らしく部の伝統を築きあげていくつもりだ。