第44 回全国高校バスケットボール選抜優勝大会(ウインターカップ)が12月23日から29日まで東京体育館で行われ、男子は明成(宮城)が福岡大大濠(福岡)を92-78で破り、4年ぶり2度目の優勝を果たした。(文・写真 青木美帆)

■終始ゲームをコントロール

優勝の瞬間は、意外にもこぢんまりとしたものだった。喜びはじわりじわりと波紋のように広がっていき、気付けば大きなうねりとなって選手たちを爆発させた。4年前に続いてチームの歴史に刻まれた2つ目の「星」。それを手に入れるために、どれだけの苦労を重ねてきたのかが分かるような光景だった。

決勝序盤は八村塁(1年)=富山・奥田中出身=が高さを生かしてゴール下から得点を重ねた。八村に相手の注意が向いたところを見逃さず宮本滉希(3年)=宮城・蒲町中出身=が中から、白戸大聖(3年)=静岡・熱海中出身=が外から攻める。守っては福岡大大濠が苦手とするゾーンディフェンスを絶妙なタイミングで使い、結局一度もリードを譲らなかった。佐藤久夫監督(64)は「終始ゲームをコントロールできたのが勝因」と満足げな表情を見せた。

決勝で32得点と大暴れした怪物ルーキー・八村はもちろんだが、「春先から見事に成長した」(佐藤監督)ガード陣の活躍も光った。主将の植村哲也(3年)=東京・小岩四中出身=は相手チームのキーマンを立て続けに抑え、金子大希(3年)=新潟・本丸中出身=は積極的な3点シュートを、ここぞという場面で決めた。「(得点が取れたのは)パスが良かったから」と八村が振り返るように、インサイドにボールを入れる技術も、2選手とも非常に高かった。

■全員でチームをまとめよう

植村は中学3年の時、明成の初優勝を東京体育館で見ている。「僕がいつか、あの優勝を再現してみせる」。しかし1年時は全国大会に出場することがかなわず、2年時はベスト8すら遠かった。今年度は全国高校総体(インターハイ)後に宮本から植村に主将が変わる異例の出来事もあったが、「それまでは率先してまとめる選手がいなかったけど『全員でチームをまとめよう』という気持ちが出てきた」(金子)と、これを機にチームの結束が高まった。

「諦めないで一つ一つ、最後までプレーし続けるのが明成のバスケット。それを選手たちがよく出してくれた」。普段は厳しい指揮官も、そっと涙をぬぐった。

【TEAM DATA】
2005 年創部。09 年のウインターカップで初優勝。12 年8月のインターハイ準優勝。OB に伊藤駿、石川海斗(ともに日立サンロッカーズ)ら。