優勝を決める1勝を挙げた綱島丈君を胴上げする暁星高校の選手たち

競技かるたの高校日本一を決める第38回全国高校小倉百人一首かるた選手権大会(全日本かるた協会など主催)の団体戦が7月23日に近江神宮・近江勧学館(滋賀)で行われ、強豪の暁星高校(東京)が9年連続11度目の優勝を果たした。息詰まる熱戦を勝ち切れたのは、日々の苦しい練習でメンタルを鍛えた成果だ。(文・写真 白井邦彦)

「畳の上の格闘技」と言われる競技かるた。今年映画化された漫画「ちはやふる」の人気もあって、競技人口が増えているとされる。「かるたの甲子園」の愛称で呼ばれる今大会の団体戦にも過去最多の56校が出場。都道府県予選にも昨年の273校を上回る301校が参加した。

決勝は大接戦

団体戦は、各校の登録選手8人のうち5人が出場し、1対1で対戦して勝った人数を競う。9連覇がかかった暁星高校は、中津南高校(大分)との決勝は4人が対戦を終えた時点で2勝2敗。既に対戦を終えた選手が固唾をのんで見守る中、最後は副将の綱島丈君(3年)が競り勝って優勝を決めた。

決勝の最後に残った対戦で9連覇の行方を託された暁星高校の綱島丈君(左)

主将の東友則君(3年)も決勝の対戦で勝利し、最後は見守る側だった。優勝を決めた瞬間、感極まって涙を流した。「綱島君の試合を見ながら、同級生のメンバーと一緒に苦しい時間を乗り越えてきたことが頭の中を巡った。だから、最後は何でもいいから勝ってくれって祈るような感じで(笑)。3年間やってきたことが出たから、あの試合を勝ち切れたんだと思うし、自分もこみ上げるものがありました」と表彰式後に話した。

決勝戦で自身の対戦終了後、メンバーを鼓舞し続けた主将の東友則君

「練習よりは厳しくない」

練習は平日4日に加え、休日にも行う。休日は最長9時間かけ大会を想定して1日で6試合をこなす練習も。「普段の練習で課題は全て克服するように努めてきました。だから、練習通りの力を出せば勝てると自分にも部員にも言い聞かせてきました」と東君。決勝の途中に「練習よりは厳しくないよ」と綱島君に声を掛けたのも、それを再確認させるためだ。

「苦しい状況を想定した試合をやって、その中でいかにお手付きをしないかという練習もしてきました。やはり最後の最後で勝敗を分けるのはメンタルの強さ。チームワークも暁星の強みですが、個人個人が大事な局面で力を発揮できたのが9連覇達成には大きかったと思う」と振り返った。

選手唯一の1年生、松島宗平君(左)

チームワーク生きた

前評判通りの強さをみせた暁星でも、決勝に進出するまでにも山場があった。特に3回戦では鶴丸高校(鹿児島)に最後までリードを許す展開。あと2枚取られたら負けるという場面で、船登勇輝君(3年)が重圧を跳ね返し3枚連続で札を取って踏ん張った。

田口貴志監督は「大会を通してやはり全国(に出場するチーム)は強いと感じました。鶴丸戦は本当に危なかった。でも、その苦しい試合をみんなでなんとか勝ち切れた。日々の苦しい練習で身に付いた忍耐強さとチームワークの良さが生きた試合でした」と話す。

優勝記録に迫る

暁星高校は富士高校(静岡)が持つ最多優勝(12度)、連続優勝(10年)の大会記録にいずれもあと1に迫った。

3位決定戦では、地元の膳所高校(滋賀)が3勝2敗で高岡高校(富山)に競り勝ち、第30回大会以来8大会ぶり3度目の3位に入った。

【暁星高校競技かるた部】
1990年創部。中高一貫のため中学生と共に活動。中学生を合わせて部員37人。高校生は11人(3年生5人、2年生2人、1年生4人)。練習は週4回、平日は約3時間半、休日は多い日で約9時間。全国高校かるた選手権出場は30回目。全国高校総合文化祭で昨年まで6連覇中の東京都チームにも毎年選手を出している。
中高一貫で活動する暁星競技かるた部。中学生を合わせて37人

【大会結果】
優勝 暁星(東京)
準優勝 中津南(大分)
3位 膳所(滋賀)
4位 高岡(富山)
ベスト8 鹿本(熊本)、五所川原(青森)、浦和明の星女子(埼玉)、横浜平沼(神奈川)

準優勝の中津南高校(大分)の選手たち