2024年4月に2つ同時に誕生する千葉工業大学の新学部「情報変革科学部」と「未来変革科学部」。それぞれの学部・学科に所属する先生に高校生記者が特別に取材した。今回登場するのは、人間にとって「気が利く」AIの研究をする今井順一教授(認知情報科学科)だ。

 

「気が利いてるね」と思われるAIを研究

私の研究室で行っているのは、「人間共生システム」という、気が利いて頼もしいと思ってもらえるような情報システムの研究と開発です。

相手に「気が利いているね」と思ってもらうのは、人間でもけっこう難しいと思います。それをコンピュータが実現するためには何が必要なのかということがポイントです。相手の言うことを聞くというだけでなく、コンピュータの側から、頼んでもいないのにやってくれる、そんなことを目指しています。

そのため、私の研究では人間への理解ということがとても大事になってきます。支援する相手の人が「どう思っているのか」「どんな目的を持っているのか」といったことを、コンピュータが認識しながら、うっとうしくならない程度に手助けしてあげることが必要なんです。今後この部分を、情報技術の観点から進めていくことを考えています。

今井順一教授と高校生記者のhinataさん

人間の心理や考えへの理解も必要

まずは、人間をよく観察して、その人が今「どういう状態になっているのか」「どう思っているのか」を認識すること。そして、相手が求めていることが何で、自分が何をしてあげられるかということを突き詰めていきます。さらに進んだ形としては、本人がふだん気にしていない情報を認識し、それらをうまく活用することで「気が利いている」と感じてもらえる支援をすることまで視野に入れています。

コンピュータに、人間の感情や思いのようなあいまいなものを教えていくはとても難しいのですが、その分やりがいも大きいです。困っている時にさりげなく手をさしのべてくれるコンピュータやロボットの開発を目指していきます。

 

hinataさん

「気が利くAI」というワードを今井先生から聞いた時、頭の中にはハテナが浮かびました。「AIとかロボットって、あらかじめプログラムされた、言われたことしかできないんじゃないの?」と思ったのも束の間、その意味がわかりました。人間の生活をサポートする、そこに重点が置かれたAIの研究が行われています。実際にスクワットの理想的な姿勢について、AIから細かく指導を受けた時は、本当に人間が必要なくなる日が来ると確信しました。同時に、目覚ましい発展に対して、私ができることはまだあるのだろうか、と少し恐ろしくなりました。そんな研究でした。気がきくAI、という一見イメージと違うワード。踏み込んでみると、すごく奥が深くて、興味が湧いた内容でした。
 

提供:千葉工業大学